第9回定例研究会

2010.3.9 秋葉原UDX(日立製作所)
「環境への影響低減」

議事録

趣旨説明 2009年水化学ロードマップにおける「環境負荷低減」の概要 荘田 泰彦(三菱重工業)
水化学ロードマップ2009の中での、“環境負荷低減”の位置づけとそれに関連する技術マップとその導入シナリオ、およびそれを実現するロードマップが紹介された。

1 オフガス高感度モニタ 曽田 康敬(日立GEニュークリア・エナジー)
2 PWRプラントにおける添加薬剤の低減に関する検討 石原 伸夫(三菱重工業)
3 原子力水浄化装置の性能改善 出水 丈志(荏原製作所)
4 凝縮沈殿法を用いた高濃度塩化物イオン含有廃液からの放射能除去方法の開発 関 晃太郎(東電環境エンジニアリング)
5 上下水道システムにおける環境対応の動向と処理技術 陰山 晃治(日立製作所 エネルギー・環境システム研究所)

第9回研究会議事録

水化学部会定例研究会 第9回研究会議事録

1.開催テーマ 「環境への影響低減」
2.開催日時:2010年3月9日(火) 13:30~17:00
3.開催場所:秋葉原UDXビル20階 日立製作所 会議室

4.内容
勝村部会長の開会挨拶に続き、今回のテーマの趣旨説明のあと、5件の発表があった。

趣旨説明
講演タイトル:2009年水化学ロードマップにおける「環境負荷低減」の概要
三菱重工業 荘田泰彦氏

講演概要:水化学ロードマップ2009の中での、“環境負荷低減”の位置づけとそれに関連する技術マップとその導入シナリオ、およびそれを実現するロードマップが紹介された。

講演1
講演タイトル:オフガス高感度モニタ
日立GEニュークリア・エナジー 曽田康敬氏

講演概要:BWRの燃料破損を検出する線形放射線モニタとバイアルサンプラを用いたバッチ式の核種分析に代わり、連続的に核種分析が可能となる高感度オフガスモニタについて紹介した。
Ge半導体検出器、電気式冷却器、FAパソコンと無停電電源装置を組合せ、低エネルギーγ線に適した薄型半導体の採用とバックグラウンドを低減するための減衰管を採用することにより、核種分析を連続かつ高信頼度で実現することを可能とし、燃料破損の早期検出に貢献する。

講演2
講演タイトル:PWRプラントにおける添加薬剤の低減に関する検討
三菱重工業 石原伸夫氏

講演概要:PWR二次系の構成材料の防錆剤として用いられているヒドラジンはPRTR法にて第一種指定化学物質に指定され、毒性を有することから今後は規制の強化が更に進んで使用できなくなることも想定される状況にある。このような状況の中で、火力やPWRプラントでの使用状況と代替え手法の検討状況を紹介した。代替え剤の検討と合わせて使用量の削減についても検討が進められているが、火力では代替え薬品の不適合で配管が減肉した例もあり、十分な検討が必要である。

講演3
講演タイトル:原子力水浄化装置の性能改善
荏原製作所 出水丈志氏

講演概要:原子炉浄化装置に採用されているろ過脱塩装置の構造、機能と性能改善への取り組み状況を紹介した。性能向上には流れの制御と均一なプリコートが重要であり、3段整流板を採用することで一方向流れを形成するとともに、低濃度で一定なプリコートスラリーを供給することで均一で良好なプリコート層が形成できる。エアバンプとエアスクラビングにより良好な逆洗性を得ている。さらに粉末カチオン樹脂の粒径制御によりアニオン/カチオン比を大きくすることで貫流イオン交換容量を増やせる可能性があることが示された。

講演4
講演タイトル:凝縮沈殿法を用いた高濃度塩化物イオン含有廃液からの放射能除去方法の開発
東電環境エンジニアリング 関晃太郎氏

講演概要:中越沖地震の影響で塩分濃度の高い水が管理区域内の廃液タンクに貯留されたが、廃液の性状が通常の放射性液体廃棄物処理設備での処理に問題があるものであった。そこで、4000tという大量の高濃度塩化物イオン及び微量の放射性物質を含む廃液処理手法を検討し、最適なアルカリ凝集沈殿の条件を決め、ろ過処理と組合せる方法を採用した。これにより、僅かの放射性廃棄物発生量で全ての廃液処理を完了した。

講演5
講演タイトル:上下水道システムにおける環境対応の動向と処理技術
日立製作所 エネルギー・環境システム研究所 陰山晃治氏

講演概要:上下水道システムの概要と環境規制への対応状況並びに開発技術であるオゾンマイクロバブルについて紹介した。上下水道システムで扱う水には水道水と再生水、下水放流水の3種類があり、それぞれに水質基準が設定され、それを満足させるために適した処理方法が採用されている。オゾン処理は臭気の除去などに有効であり、その利用効率を向上させるためマイクロバブルを活用する技術を開発した。この技術を適用することにより再生水の色度の顕著な低下を確認するとともに運転コストの低減にもつながることが示された。

5.連絡事項
1)次回定例研究会案内(東京電力・實重氏):次回は「人材育成・情報整備」に関し、東電 技術開発研究所にて5/31ないし5/24 に開催する予定
2)夏季セミナ案内(東芝・山崎氏):本年7/7、8、9の日程で宮城県松島のホテル大観荘にて開催予定。基調テーマは、「水化学技術の基盤と将来展望」。
3)次回総会案内(原電・瀧口氏):茨城大学にて開催される春の原子力学会にて部会総会を3/26、L会場で開催予定。                                    以  上

第10回定例研究会

2010.5.31 東京電力(株)技術開発研究所
「人材育成・情報整備」

趣旨説明 2009年度水化学ロードマップにおける「人・情報の整備」の概要 實重 宏明(東京電力)
講演概要:水化学ロードマップ2009における,“人・情報の整備”の位置付けとそれに関連する技術マップとその導入シナリオ,およびそれを実現するロードマップが紹介された。

1 水化学に関する技術情報について 長沢 克己(東芝プラントシステム)
2 米国の水化学関連の標準化を踏まえた国内標準化について 平野 秀朗(電力中央研究所)
3 国内の標準整備状況と今後の対応について 實重 宏明(東京電力)
4 日立GEニュークリア・エナジーにおける水化学分野での技術伝承と人材育成 布施 元正(日立GEニュークリア・エナジー)
5 三菱重工業での水化学関連部門技術伝承と人材育成について 荘田 泰彦(三菱重工業)

第11回定例研究会

2010.10.25 北陸電力(株)
「燃料漏えい管理」

1 BWR燃料と水化学の係わり(燃料部材の腐食挙動等に関するトピックス) 伊藤 邦雄(グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン)
2 PWR燃料と水化学の係わりについて(燃料被覆管の腐食挙動と一次冷却材条件) 篠原 靖周(ニュークリア・デベロップメント)
3 国内BWRにおける漏えい燃料発生時に適用する出力抑制法に係る運用指針について 坂口 英之(北陸電力)
4 PWR燃料リーク運転時の監視方法について 宮越 裕久(関西電力)
5 志賀2号機燃料漏えいに伴う希ガスよう素放出抑制対策 斉藤 豪(北陸電力)

第12回定例研究会

2011.3.7 ()電力中央研究所 狛江地区
「材料健全性」

議事録

1 福島第二原子力発電所1号機における酸化チタン注入の実施について 小藪 健(東京電力)
2 PWR一次系 溶存水素濃度の最適化に関する取り組み 杉野 亘(日本原子力発電)
3 JMTRを用いた水化学実験 塙 悟史(日本原子力研究開発)
4 PWR環境における強加工ステンレス鋼のSCC進展速度 寺地 巧(原子力安全システム研究所)
5 423および453Kの高温純水中における鋭敏化ステンレス鋼のSCC感受性に及ぼす過酸化水素の影響 加古 謙司(電力中央研究所)

第12回研究会議事録

(社)日本原子力学会 水化学部会 第12回定例研究会実施報告
平成23年3月11日
(社)日本原子力学会 水化学部会

1.開催日時:平成23年3月7日(月) 13:30~17:00

2.開催場所:(財)電力中央研究所 狛江地区

3.参加者:51名

4.概要
「材料健全性」を基調テーマとし、構造材料のSCC評価に関わる電気事業者の取り組み、及びSCCメカニズム究明に関する研究の最新動向を紹介し、水化学面からの課題や方向性等について議論した。

講演1
講演タイトル:福島第二原子力発電所1号機における酸化チタン注入の実施について
演者:東京電力株式会社  小藪健
講演概要: Halden炉における酸化チタン注入実証試験結果および福島第二原子力発電所1号機における酸化チタン注入の概要について紹介があった。Halden炉試験では、炉外でも酸化チタン注入によるECP低下効果が見られ、低DO濃度域では炉内の酸化チタン注入環境下とECPはほぼ等しくなる結果が示された。実機注入では、ECP低下に必要な量の酸化チタンが付着し、燃料被覆管および水質への影響は見られていないとの報告があった。酸化チタン付着量調査は注入後4サイクルまで、被覆管の外観と酸化被膜厚さ調査については注入後5サイクルまで実施するとの計画を示した。また、ECP測定については、福島第一原子力発電所6号機の炉内にECPセンサーを設置・モニタリングすることにより、維持規格・原子力学会の水素標準に反映する計画を示した。
酸化チタン注入の目的(SCCの発生抑制なのか進展抑制なのか)、およびチェレンコフ光が届きにくい部位への効果に関する議論があった。

講演2
講演タイトル:PWR一次系 溶存水素濃度の最適化に関する取り組み
演者:日本原子力発電株式会社  杉野亘
講演概要:PWR一次系統内のニッケル基合金のPWSCC対策として検討が進んでいる溶存水素(DH)濃度の最適化に関する取り組みについて紹介があった。PWSCC進展速度のDH濃度依存性から、日本は現行より低い値(5cc-STP/kgH2O)で管理する低DH管理、米国では高DH管理(50cc-STP/kgH2O程度)を指向している。PWSCCの発生抑制に対しては、低DH管理の方が有利であるとのラボデータが示された。また、放射線分解への影響、燃料健全性および被ばく低減効果に対しても低DHの効果が見られるとの検討結果を示した。
低DH運転による構造材表面酸化皮膜の性状、290℃でのSCC進展抑制効果等に関する議論があった。

講演3
講演タイトル:JMTRを用いた水化学実験
演者:独立行政法人日本原子力研究開発機構  塙悟史
講演概要:材料試験炉(JMTR)へのインパイルループの設置と計画されている照射下水質評価試験の概要について紹介があった。JAEAではラジオリシスモデルの検証を目的としたECPセンサーの開発と照射下ECP測定を行うとともに、高精度な過酸化水素濃度測定技術を開発し、モデル検証・ベンチマークに使用可能なデータの取得を計画している。H24年度までにECPセンサーの照射下実証試験を終了し、H25年度より照射下水質評価試験を開始する計画を紹介した。
JMTRのPWR試験設備での試験計画、照射試験の概要等に関する議論があった。

講演4
講演タイトル:PWR環境における強加工ステンレス鋼のSCC進展速度
演者:株式会社原子力安全システム研究所  寺地巧
講演概要:270~360℃のPWR環境における強加工304鋼および316鋼のSCC進展速度に関する試験研究の概要について紹介があった。冷間加工度(降伏応力)の増加に従い亀裂進展速度は大きくなり、亀裂進展速度は加工方位にも依存する結果を示した。一方、温度の影響については、270~320℃程度まではアレニウス型の温度依存性を示すものの、320℃を超えると亀裂進展速度は低下する結果を紹介した。また、冷間加工度、応力、温度等をパラメーターとする亀裂進展速度評価式を提案した。
冷間加工度の影響、表面酸化皮膜の溶解の影響、疲労予亀裂先端部からのSCC亀裂分岐の影響、およびSCC亀裂進展速度評価式に関する議論があった。

講演5
講演タイトル:423および453Kの高温純水中における鋭敏化ステンレス鋼のSCC感受性に及ぼす過酸化水素の影響
演者:財団法人電力中央研究所  加古謙司
講演概要:高温純水中における鋭敏化ステンレス鋼のSCC感受性に及ぼす過酸化水素の影響に関する試験研究の概要について紹介があった。この研究は、BWRの起動時水素注入の条件の最適化を目的とし、起動時に発生する過酸化水素濃度と酸素濃度の指標となる実効酸素濃度条件および温度条件をパラメーターとして、過酸化水素共存環境下においてSSRT試験によりステンレス鋼のSCC感受性を評価したものである。423Kでは、実効酸素濃度400ppb条件でSUS304鋭敏化材にSCC感受性が認められず、453Kでは、実効酸素濃度20ppb条件でSCC感受性が認められなかったことから、423Kまでは、水素注入を実施しなくてもSCC発生域に入らず、453Kでは、実効酸素濃度を20ppbまで低減することでSCC発生域に入らないとの結果を示した。
ECP測定、起動時を考慮した温度域での影響評価、および実効酸素濃度に関する議論があった。

5.連絡事項
・次回は、2011年6月28日(火)、電源開発本店にて開催予定。

第13回定例研究会

2011.6.28 電源開発(株)本店
「計測技術」

1 高温水化学センサーの動向 橋本 資教(電力中央研究所)
2 高温純水中の電気化学測定 石田 一成(日立製作所)
3 オンライン化学センサーによるプラント水質管理例 大橋 伸一(オルガノ)
4 PWRの1次系水質管理について 志水 雄一(三菱重工業)
5 水質計測のための前処理技術について 鵜沢 秀夫(日機装)

第14回定例研究会

2011.10.18 中部電力(株)東桜会館
「水処理技術」

1 PWR一次系における水素代替剤の適用 堂前 雅史(電力中央研究所)
2 PWRプラントへの高温電気脱塩技術の適用 宮崎 豊明(東芝)
3 復水脱塩装置のイオン交換樹脂の評価方法 萩原 正弘(荏原製作所)
4 改良型復水脱塩塔の提案 小菅 崇弘(オルガノ)
5 BWR復水脱塩装置の劣化メカニズムに基づく性能評価法 稲垣 博光(中部電力)

第16回定例研究会

2012.6.1 日本原子力発電(株) 本店
「水化学管理標準に係る取組みについて」

議事録
1 水化学管理標準の概要 久宗 健志(日本原電)
2 BWR/PWR水化学管理指針の概要 梶谷 博康(中国電力)
BWR資料
3 BWR水化学管理の設定根拠 碓井 直志(日立GENE)
4 PWR化学分析標準の制定 西村 孝夫(三菱重工業)

第17回定例研究会

2012.10.22 北海道電力(株)本店
「被ばく低減への取り組みについて」

1 水化学ロードマップにおける被ばく低減の位置づけと今後の課題 寺地 巧(関西電力 原子力事業本部)
2 泊発電所3号機 温態機能試験からの 亜鉛注入による線量低減効果 坂本 孝弘(北海道電力)
3 東芝におけるBWRプラント被ばく線源低減技術 山本 誠二(東芝)
4 BWRプラントの線量低減技術と今後の展開 清水 亮介(日立GENE)