2007.6.25 日本原子力発電(株)本店
「高経年対策と水化学」
1 我が国の高経年化対策と産学官の連携について 菅野 眞紀(原子力安全基盤機構 規格基準部高経年化評価室)
2 BWR原子炉水環境下における酸化チタンによるSCC緩和効果 高守 謙郎(東京電力技術開発研究所材料技術センター)
3 PWR一次系における冷却材中溶存水素濃度の最適化―調和のとれたSCC環境改善を目指して― 永田 暢秋(日本原子力発電 発電管理室設備・化学管理Gr)
2007.6.25 日本原子力発電(株)本店
「高経年対策と水化学」
1 我が国の高経年化対策と産学官の連携について 菅野 眞紀(原子力安全基盤機構 規格基準部高経年化評価室)
2 BWR原子炉水環境下における酸化チタンによるSCC緩和効果 高守 謙郎(東京電力技術開発研究所材料技術センター)
3 PWR一次系における冷却材中溶存水素濃度の最適化―調和のとれたSCC環境改善を目指して― 永田 暢秋(日本原子力発電 発電管理室設備・化学管理Gr)
2007.10.26 三菱重工(株)横浜ビル
「試験・研究に係わる基盤技術開発」
1 FACメカニズム解明に係わる基礎研究 荘田 泰彦(三菱重工業株式会社 軽水炉プラント技術部)
2 FACに係わる各因子の影響評価研究 米田 公俊(電力中央研究所 軽水炉高経年化総括プロジェクト 配管減肉ユニット)
3 高温高圧過酸化水素ループに関する実験技術―照射下を模擬した腐食環境における材料腐食挙動のin-situ計測 佐藤 智徳(日本原子力研究開発機構 腐食損傷機構研究グループ)
4 加速器を用いた水化学研究施設の提案 勝村 庸介(東京大学 工学系研究科)
2008.3.5 (株)東芝 東芝研修センター
「被ばく線源低減」
1 BWRプラントにおける被ばく線量低減への取り組み 宮澤 晃(東京電力)
2 PWRプラントにおける被ばく線量低減への取り組み 松浦 正利(関西電力)
3 被ばく低減に関する国の取り組み 大嶋 巌(原子力安全・保安院)
4 化学除染後の再汚染抑制技術の開発状況 長瀬 誠(日立GEニュークリア・エナジー)
5 高経年化BWRプラントの被ばく線源低減技術 四柳 端(東芝)
6 溶存水素濃度最適化等のPWR被ばく低減技術の動向について 梅原 隆司(三菱重工)
国際活動報告
1 アジア水化学シンポジウム(台湾/H19.9.26-28) 瀧口 英樹(日本原子力発電) 岡村 雅人(東芝)
講演概要:本シンポジウムは水化学技術者・研究者の情報交換と経験の共有並びに人的ネットワーク構築を通じてのアジア地域における原子力発電の安全性向上と定着を目的に隔年で開催されている。今回(第3回)は台湾電力の主催により台北市で2007年9月27~28日に開催された。参加者数は84名(日本24名,韓国5名,台湾55名)で,発表件数は30件であった。基調講演では,日本から,国内原子力発電所の状況を報告すると共に,PWRとBWRに共通の水化学制御の提案があった。さらに,高経年化・燃料高度化・出力向上における水化学の技術課題と役割の重要性,及びその効果の定量化が必要との指摘があった。台湾からは「水化学最適化」の取り組みが紹介された。その内容はEPRIの水化学管理指針に準じたものであった。一般発表では,PWR関連が17件,BWR関連が10件であった。PWR一次系関連では,亜鉛注入実機適用実績,クラッドの熱力学と燃料表面サブクールについて3件(いずれも日本)の発表があった。PWR二次系関連では,SG伝熱管二次側腐食損傷・SG水位振動について5件,FACについて4件,浄化技術について1件,タービンでのEarly Condensationについて1件の発表があった。BWR関連では,被ばく低減について3件,予防保全について5件,その他2件の発表があった。次回は,2009年に日本原子力学会水化学部会が主催し名古屋(ホスト中部電力殿)にて開催することとなった。
2 IAEA燃料/水相互作用RCM(FUWAC) 内田 俊介(JAEA)
講演概要:IAEAプロジェクト「高燃焼度及びプラント経年化時の燃料挙動の信頼性確保を目指した最適水化学制御」(Optimization of Water Chemistry Technologies and Management to ensure Reliable Fuel Performance at High Burn-up and in Ageing Plant)の第2回RCM(Research Coordinated Meeting)が,2007年12月11-14日にインドのチェンナイにおいて開催され,日本から内田部会長が出席した。IAEAにおいては,燃料被覆管と水化学相互作用をテーマとして1981年に最初の水化学関連プロジェクト(CCI: Investigation of Fuel Cladding Interaction with Water Coolant in Power Reactor)が開始されてから,原子炉水化学のマニュアル作成(WACOLIN)と水化学モニタリングと制御(WACOL 及び DAWAC)のプロジェクトに引き継がれ,再び燃料と冷却水の相互作用について高燃焼度化と高経年化に対応した議論をすることとなった。今回のRCM参加者は23名(IAEA,ブルガリア,カナダ,チェコ,フィンランド,フランス,ハンガリー,インド,韓国,日本,ルーマニア,スウェーデン,ロシア,ウクライナ,中国,米国)であった。主な検討課題は,AOAへの影響因子(高負荷燃料,長期運転サイクル,運転条件,Li濃度,LiとKの差異),被覆管の腐食(新合金,Li限界値),線量率低減である。これらの課題について参加各国からプラントの経験と基礎実験・理論が提供された。特に,AOAは各国で発現の状況とプラント運転への影響が異なるようであり,AOAを支配するパラメータの同定に注力する必要がある。次回は2009年6月にフィンランドで開催される予定。
2008.6.13 電力中央研究所 狛江地区
「水化学管理の体系化」
1 標準委員会水化学管理分科会の設立と今後の動向 中村 年孝(関西電力)
2 BWRおよびPWR水化学管理の体系化 平野 秀朗(電力中央研究所)
3 水の放射線分解シミュレーションに係わる研究活動と今後の課題 高木 純一(東芝) 勝村教授
4 水素注入効果の評価における課題 和田 陽一(日立製作所)
5 維持規格の検査規定に関する現状と今後の課題 堂崎 浩二(日本原子力発電)
水化学部会活動報告
1 「水化学サマーセミナ」最終案内 荘田 泰彦(三菱重工業)
荘田氏より、本年7月15日~7月17日にかけて福井市フェニックス・プラザで開催される第5回「水化学サマーセミナ in 福井」の開催に関する案内があった。
2 国際会議「NPC’ 08 Berlin」の案内 布施 元正(日立GEニュークリア・エナジー)
布施氏より、本年9月15日~9月18日にかけてドイツ・ベルリン市で開催されるNPC’ 08 Berlin “International Conference on Water Chemistry on Nuclear Reactor Systems”(主催:VGB Power Tech)に関して説明があった。同国際会議には、18ヶ国が参加予定であり、講演発表60件、および100件以上のポスター発表が行われるとの報告があった。
3 水化学国際会議の日本開催について 日本原子力学会・水化学部会・運営委員会
首記運営委員会の企画幹事(日本原電 瀧口氏)より、水化学国際会議の日本開催について提案がなされ、以下の基本事項について了承された。
①(社)日本原子力学会水化学部会が主催して、2012年あるいは2014年に「水化学国際会議」を日本で開催すべく準備活動を開始する。
② 今後、関係機関の理解・協力・支援を募るため、(社)日本原子力学会企画委員会・理事会の承認を得る。
③ 高経年化対応、燃料高度化、軽水炉高度化に向けた水化学の取組みと次世代型軽水炉への反映を基調テーマとする。
④ 今年9月の水化学国際会議国際諮問委員会で主催国として立候補の意思表示をすること。
株式会社原子力安全システム研究所
技術システム研究所
高経年化研究センター 材料グループ
寺地 巧
私が頂いた賞は“Poster presentation and design”というカテゴリーであった。英語が得意では無いため受賞の連絡を受けたときは驚いたが、受賞者というよりポスターが評価されるカテゴリーのようで、なんとなく納得できた。とはいえ、私にとって国際会議の場でこのような賞をいただけることは大変光栄なことで、副賞として頂いたワインは記念品として飲まずに保管してある。
さて、ポスターの内容は、PWR1 次系環境下におけるSUS316 と600 合金の材料表面および粒界における腐食挙動について検討した結果である。SUS316 より600 合金の方が耐食性に優れるが、顕著な粒界部の酸化は600 合金のみで生じることを示し、その理由を両合金の耐食機構の違いにあると考察したものである。これらの腐食挙動は応力腐食割れの発生・進展に影響すると考えられ、現在もその詳細を継続検討している。
私が所属する原子力安全システム研究所は、原子力発電の安全性および信頼性の一層の向上のために関西電力(株)により設立された会社で、技術的な視点からだけでなく、社会的な視点からの研究も行っている。安全に関する重要な役割を担っているとの高い志を持ち、材料に関する基礎的な研究に地道に取り組んでいるため、このような形で評価されることは研究の励みになり、本当にいい機会であったと感じている。
最後に、受賞を紹介させていただく場を提供いただいた水化学委員会の部会長ならびに幹事の皆様に感謝したい。
(財)電力中央研究所
材料科学研究所
原子力材料領域
河村 浩孝
2008年9月14(日)~18日(金)に、ドイツBerlin市のMaritimホテルで開催された” International Conference on Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems, 別称NPC’08”において、”Poster Award”を頂いた。何やら、最優秀ポスター賞で、“Technical Content of the Poster”、”Author’s Presentation and Explanations”及び”Poster Presentation & Design”の3部門の総合優勝とのことであった。
今回、私の発表は口頭発表の枠からはずれ、正直、モチベーションが下がっていた。でもせっかくの機会なのでと開き直り、「内容に乏しい分、第一印象が勝負」と考え、デザインと読み易さ重視の発表ポスターを持ち込んだ。会場では、思いがけなく多くの参加者に関心を持って頂き、質問や問い合わせを多数受け、セッションは充実したものとなった。ポスター賞があることは判っていたが、3つのカテゴリーがあることも知らず、「デザインで点数をくれる審査員がいるかな」ぐらいにしか思っておらず、受賞は全くの想定外であった。バンケットで最後に名前を呼ばれたときには口に含んだビールを吹き出しそうになるくらい驚いた。授賞式で、石槫顕吉東大名誉教授から、「すごいぞ。3部門の総合優勝だよ。」と声をかけられたとき、膝が震えた。翌日、一部の審査員から選考過程の詳細を伺い、多数の審査員に支持され、投票頂いたことを知り、改めて身の引き締まる思いであった。
水化学研究に従事している一研究者として、関連の大きな国際会議で受賞できたことは、大変名誉なことであり、今後の研究活動の励みとなる。なお、副賞のワインは、自宅で就寝中である。
ポスターの内容は、PWR燃料被覆管表面へのクラッド付着現象を非照射下のラボで再現するとともに、付着因子として想定される熱水力因子と水化学因子をパラメータとし、各因子の寄与度合いを検討した結果をまとめたものである。想定される全ての因子について検討が終了しているわけでなく、寄与度合いの定量評価、クラッド付着モデルの構築等、課題は山積である。
今回、7枠中、2枠において日本人受賞者が出たが、水化学部会の刺激と活力に繋がれば幸いである。
最後に、紹介の場を提供頂いた水化学委員会の部会長ならびに幹事の皆様に感謝する。
アジア水化学シンポジウムの第1,2日目の口頭発表終了後にポスターセッションが開催され、国内外から32件の発表が行われた。今回のシンポジウムからセッションの活性化を図ることを目的とし、優秀な発表に対して表彰を行うこととした。ポスターセッション中は発表者と参加者との終始活発な議論が所々で見られ、国境を越えた技術交流がされ、発表会場は大いに賑わいをみせた。すべてのセッション終了後、特に優秀なポスターについては水化学部会長、東京大学の勝村庸介先生から賞状と記念品が授与された。
ポスターセッションの受賞者を以下に紹介する。
総合的に優れているポスターに授与
Innovation Award 塙 悟史氏 JAEA
独創性、新しい見方や考え方
及び実用性があるポスターに授与
Good Design Award Mr.Anders Molander Studsvik:スウェーデン
個々の表記の美しく、
配色のよいポスターに授与
Good Presentation Award 松浦 正和氏 関西電力
説明と質疑の優れたポスターに授与
Future Dream Award Mr.Rong Sheng Zhou 上海交通大学:中国
将来の可能性が広がっているポスターに授与
評価ポイント(各5点_計30点) |
---|
1)独創性(総合的) |
新しい見方、考え方 |
2)達成できた場合、実用性はあるか |
3)ポスターの美しさ、配色の良さ |
4)奇抜さ、面白み |
5)将来の可能性 |
6)説明技術と質疑対応 |
2017年9月13日
日本原子力学会2017年秋の大会 水化学部会企画セッション報告
「福島第一原子力発電所デブリ取り出しに関わる水化学管理」実施報告
(東芝)高木 純一
以上
2009年4月8日
日本原子力学会2009年春の年会 水化学部会企画セッション
「被ばく線量低減に向けての課題と将来の取り組みについて」実施報告
関西電力(株)
中村 年孝
はじめに
「被ばく線量低減に向けての課題と将来の取り組みについて」と題した水化学部会の企画セッションを、日本原子力学会2009年・春の大会(3月23日13時~14時30分、東京工業大学B会場 西3号館 W323)において開催した。約80名の参加者を得て熱心な議論が繰り広げられた。以下に具体的な内容を記述する。
企画セッション趣旨説明
企画セッション開催にあたり、担当委員の中村(関西電力㈱)より今回の企画セッションの趣旨について、以下の通り説明があった。
原子力発電所で従事する作業者の被ばく線量は、これまで種々の対策の実施により、経年的に低下してきたが、最近の線量はほぼ横ばい状態にある。また1990年代にはかなり優位性のあった諸外国の線量と比較しても、最近ではほとんど差がない。原子力に対するより一層の安心・信頼を獲得するためにも、更なる被ばく線量低減が必要である。
これまでの海外調査結果から、わが国の線量率は世界的に見ても依然として低い状態を維持している。一方で運転サイクルや検査制度の違い等により、諸外国に比べ作業量が多いことが判明している。現在進められている新検査制度検討の中で作業量が減少し、結果的に被ばく線量が低減することも期待できるが、線量率をさらに低減するという選択肢も重要で、この点で水化学の寄与が求められている。
今回のセッションでは、国、事業者、メーカーから現状の取り組みと今後の課題や意見等を発表してもらい、今後の水化学改善による被ばく線源低減技術開発に向けての取組みの方向性について議論する事を目的とする。
講演
まず、辻氏(経産省)より「被ばく線量低減への国の関与」と題して、原子力発電所の従事者被ばくに係る国内外の規制状況及び従事者被ばく線量、被ばく低減に係る取り組み、さらに米国で実施されているリモートモニタリング、国内放射線作業管理における要改善事例等の具体的な事例の紹介があった。これら諸外国と我が国は、原子炉の運転・検査などの法的制度に差があり一概には言えないが、ALARA検査の導入が従事者被ばくの低減に寄与する可能性があるとの考えを示された。現在、原子力安全・保安院では、現行の保安検査の枠組みの中で、ALARA検査と類似な検査項目を保安検査の枠組みへ導入することにより、従事者被ばくの低減を図れないか検討を行っている。この検討作業は、単に放射線管理業務にとどまらず、原子力発電所の運転管理全般にも関係する内容となるため、実現までの道のりは容易ではないが、放射線安全に対する国民の理解を得る上でも有効と考えられる。原子炉設置者を始めとした関係者の幅広いご協力をお願いしたいとの説明があった。
次に、伊藤氏(東北電力)より、「東北電力における被ばく線量低減の取組み」と題して、女川1号機で実施されている給水鉄ニッケル比制御、女川2・3号機、東通1号機で実施している極低鉄・高ニッケル運転について紹介があり、PLR配管線量率を長期間に渡り低いレベルに維持することが可能であるとの説明があった。また、東北電力では、低コバルト材の採用等被ばく低減に配慮した設計を行い、建設時のクラッド低減対策として事業者・協力会社・メーカーが一丸となってクリーンプラント活動を継続的に行い、運転中の適切な水質管理により被ばく低減に努めているとの説明があった。
続いて伊東氏(九州電力)より、「九州電力における被ばく低減の取組み」と題して、玄海発電所において実施されている満水酸化法について紹介があり、従来法(外層クラッド除去)と比較し、放射性コバルトやニッケルの除去量は同程度であり、燃料クラッドバースト等不具合もなく、定期検査期間短縮やミッドループ運転期間短縮に寄与できるとの紹介があった。
最後に、瀧口氏(日本原子力発電)より、「水化学ロードマップでの被ばく線源低減戦略」と題して、『水化学による原子力発電プラントの安全性および信頼性維持への貢献』を目的として、(社)日本原子力学会「水化学ロードマップ検討」特別専門委員会にて、産官学の専門家による検討を通じて作成された第一次水化学ロードマップ(2007年2月)の背景と目的、そして、現在(社)日本原子力学会水化学部会「水化学ロードマップフォローアップ小委員会」にてローリング中の「水化学ロードマップ2009」における被ばく線源低減に関して検討状況の紹介があり、技術の高度化等により2016年頃までに集団被ばく線量を世界トップレベルを目標とし、また2016年以降の中長期目標としてもPDCAを回し、常に世界トップレベルの集団被ばく線量を維持することを目標とすると説明があった。
パネル討論
パネル討論では勝村先生(東京大学)を座長として、水化学ロードマップでの被ばく線源低減戦略について議論した。まずメーカー、研究機関それぞれの立場のパネリストから水化学ロードマップ推進に向けて、意見・要望が提案された。
西村氏(三菱重工業)からは「PWRプラント溶存水素濃度低減について」と題し、一次冷却材中の溶存水素濃度を低減することにより、被ばく線源低減並びに600合金のPWSCC抑制効果が期待される旨、説明があり、燃料健全性試験等の試験規模が大きいものについては国家プロジェクトにて実施を期待しているとの要望が示された。
山崎氏(東芝)からは「BWRプラントの被ばく低減について」と題し、被ばく低減と材料健全性確保を両立させた水化学を達成による配管表面最適制御の推進と今後の更なる被ばく低減の達成の為に現象論ではなく機構論の掘り下げやアプローチの方法論など新しい取り組みの議論を行うべきとの提案があった。
長瀬氏(日立GE)からは「被ばく線源低減戦略」と題し、放射性クラッドの移行メカニズムの抜本的解明をし、新技術適用時の影響評価と線源低減対策立案を推進していくべきとの提案があった。また、化学除染法の高度化を例に挙げ、要求事項の明確化及び研究開発費の確保モチベーションの維持が重要であると考えが示された。
太田氏(電力中央研究所)からは「被ばく線量低減に向けての課題と将来の取組みについて」と題し、被ばく線源低減に寄与する因子を定量的に評価することが重要であり、より定量的なロードマップの作成に繋がり、メカニズム解明と技術の高度化・適用の架け橋になるとの考えが示された。
総合討論
上述の講演とパネリストコメントを踏まえ総合討論を行った。フロアからの主なコメントを以下に示す。
○ 被ばく低減対策には工事、作業の放射線管理等のソフト対策と水質改善による線源低減、機器の自動化等のハード対策がある。今までの個人的な経験・感覚では、水質改善による被ばく低減対策が、最も大きな効果があるとの認識があり、今後も水化学部会において先導的な役割を担って行って欲しい。また、新たな被ばく低減対策を各発電所の状況に応じ積極的に導入して行って欲しい。
○ 燃料の観点から、水質改善すると燃料健全性にも影響が懸念されるが、他分野への影響を定量的に把握できるガイドラインや指標というものが今後重要になってくると考えられる。安全基盤としての指標をどのように検証するかといった位置づけで、研究を実施すれば産官学が協力して研究する材料になる。
○ ALARA精神は可能な範囲で実施すればよいのではなく、可能なものは全て実施するという前向きな姿勢で臨むことが重要である。また、新検査制度導入に伴い、必ずしも被ばく線量が下がるわけではないと考えており、実際にどういった作業では被ばく線量が上がり、どういった作業では下がるのかきっちりと分析をし、その結果によりどのような部分にどのような対策を実施する必要があるか、十分に検証していくことが重要と考える。
最後に座長の勝村先生より、産官学の関連する技術者が一同に介する原子力学会の場で、将来の被ばく線源低減戦略について議論することは非常に重要であり、今回の企画セッションで出た要望・意見を「水化学ロードマップ2009」へ盛り込み、それぞれが共通認識を持って取り組むことは今後の被ばく低減を更に加速することが期待できる。ロードマップを今後更に充実させることにより、原子力立国に相応しいレベルまで被ばく線量低減を目指したいと締めくくられた。
2008年9月30日
日本原子力学会2008年秋の大会
核燃料・水化学部会合同企画セッション実施報告
三菱マテリアル(株)
磯部 毅
はじめに
「軽水炉燃料信頼性向上の観点から燃料と水化学が連携すべき課題と将来の取組み方法について」と題した核燃料部会と水化学部会の合同企画セッションを、日本原子力学会2008年・秋の大会(於;高知工科大学)の初日9月4日の午後(13時から14時30分)開催した。約70名の参加者を得て熱心な議論が繰り広げられた。以下に具体的な内容を記述する。
セッション企画趣旨説明
座長・磯部(三菱マテリアル)より両技術分野の現状認識とセッション企画趣旨を次の通り説明した。水化学は、高経年化対応や作業員被ばく低減の観点から各種高度化を燃料の健全性確保を図りながら進めている。同時に燃料もプラント高度利用化や更なる高燃焼度化を目的にその高度化を鋭意進めている。そしてそれぞれの分野で、例えばロードマップなどで、燃料被覆管材料の腐食・水素吸収やPWRにおけるAOAなど境界領域の将来課題が取り上げられ議論されている。しかし境界領域の事象は、界面反応かつ中性子およびガンマ線の照射効果が重畳し非常に複雑である。そこで本企画セッションは、この難度の高い境界領域の課題の効率的な解決に向けて、両分野の技術者が相互理解を深め、俯瞰的な技術体系と新たに必要な連携の構築に向けての将来ビジョンを議論することを目的とする。
講演
電気事業者より、燃料側と水化学側それぞれの立場から今後の計画、将来課題・懸念事項や解決に向けたアプローチ方法が述べられた。
まず、阿部氏(東京電力)は、「BWR燃料の水に関連する将来課題と解決に向けたアプローチ」と題して、BWR燃料集合体に係わる導入当初からの幾多の改良経緯、段階的な高燃焼度化等の開発経緯、その過程での被覆管材料開発や適切な水質管理による健全性確保実績を示すと共に、さらなる燃料高燃焼度化、軽水炉の高度化利用や水質環境変化に伴う、例えば腐食・水素吸収の増加傾向など将来の課題や懸念事項を述べた。そして、その解決のためには局所環境の定義やその環境と材料(燃料被覆管)の相互作用解明が理想であるが、当面は従来の実証的アプローチ(Cook-and-Look Approach)を主体とし、今後は、燃料と水化学分野のコミュニケーションを通じてそれぞれのデータや知見の一層の有効活用や機構論的解明範囲を順次拡大していくことが重要との考えが示された。
続いて、荒川氏(関西電力)は、「PWR燃料の水に関連する将来課題と解決に向けたアプローチ」と題して、PWR燃料の高度化を目的とし燃料高度化技術戦略マップに沿って進められている燃材料の開発計画および課題、その中での被覆管の位置づけと高耐食性および低水素吸収材料の開発の重要性を示すと共に、水化学管理の変更が、開発した燃材料の腐食・水素吸収量やAOAなどに影響を与える懸念を述べた。即ち、開発材導入時点の水化学が開発開始時に明確であればそれを前提に進めれば良いが、必ずしもそうではなく、導入に際してはあらためて影響を検討する必要があるという点である。その効率的な解決のためには、被覆管の腐食・水素吸収メカニズムの解明が期待されるが、時間が掛かる長期的な課題であり、当面は実証的アプローチの合理化・高度化が重要であること、そして両分野さらには材料の専門家とも密接なコミュニケーションをとり、問題意識、情報や施設基盤など共有し、課題解決を図ることが重要との考えが示された。
最後に、門井氏(日本原電)は、「水化学側から軽水炉燃料の将来課題解決に向けたアプローチ」と題し、前二者とは別の立場から考えを述べた。水は材料と燃料の両方に接しており、これまでも水化学の変更は、プラントへの影響評価と同時に燃料被覆管の健全性確保を前提として進められてきた。そして最近では、BWRでの貴金属や酸化チタン注入、PWRでの高濃度亜鉛注入など多くの技術開発課題があるが、開発中の燃材料に対してそれらの実用化段階の水化学環境での影響評価が都度必要となる。これを効率的に行うためには、簡易的かつ比較的短期間で腐食評価を行える試験手法の確立が望まれ、そのためには燃材料や水化学技術の両分野の専門家が互いに情報を共有し、それぞれの研究開発に利用できる環境を構築すると共に、両者が協力しメカニズムに関する研究を進めることの必要性を述べた。
パネル討論
続いて研究機関、大学、メーカーのそれぞれの立場からのパネリストにより、軽水炉燃料と水化学の境界領域における将来課題の効率的な解決に向けた連携についてそのビジョンや具体的方法などが示された。
内田氏(JAEA)は、「水化学部会からの核燃料開発研究への寄与の可能性」と題し、燃材料開発期間の長期化傾向の改善のためには機構論的な燃材料挙動・健全性評価が重要であり、そのために例えばラジオリシスモデルなどによる腐食評価技術や局所腐食環境のin-situ計測技術など共同でプロジェクトを組む必要性を述べた。また将来のプラント高度化に際し、AOAへの対策準備の必要性に言及した。
宇埜氏(阪大)は、核燃料研究のおける大学の立場と役割を述べた。技術戦略マップで「学」に対しては、機構論的研究主体と継続的な人材育成・基盤整備が期待されており、阪大においてもJNESや電力、メーカーと共同で燃料(被覆管)関連の研究を実験から理論計算まで幅広く進めていること、さらに人材を育成するための教授に対する人材充実プログラムも並行して進められていることが紹介された。
河村氏(電中研)は、研究機関かつ水化学の立場から考えを示した。水と燃材料の境界領域の課題解決のためには現象論的評価に加えメカニズム解明に向けた検討が必要であり、両分野の専門家の協力、研究体制の整備さらには照射下試験設備の整備の重要性を述べた。そして照射試験設備の整備の為には国レベルでの取り組みの必要性が示唆された。
土内氏(原燃工)は、PWR燃料メーカーかつ燃料側の立場よりコメントした。境界領域の課題には被覆管の腐食・水素吸収とAOAがある。前者は、燃料および水化学はそれぞれの高度化に際し、互いに意識し影響を評価しつつ進めているが、悪影響が無い範囲での取組みとなる。それに対し後者はクラッド低減、SCC対策など両者のベクトルが一致することから、協力して取組む課題として適当であるとの考えを示した。
四柳氏(東芝)は、BWR燃料メーカーかつ水化学側の立場よりコメントした。水化学は燃料健全性、材料健全性、被ばく線量低減および放射性廃棄物量低減の4つの目的を同時に達成することが求められ、水-燃料間の相互作用に限ってもそのパラメータは非常に多い。技術課題解決のためには実機での挙動メカニズムに基づき制御すべきパラメータを一つ一つ明確にする作業を繰り返すことが重要であると述べた。
総合討論
内田氏(JAEA)を進行役とし上述の講演とパネリストコメントを踏まえ総合討論を行った。フロアからの主なコメントを以下に示す。
・ 燃料や水化学分野の開発においては、全体としてのコスト、産業としての競争力を定量的に評価することが重要である。それ無しでは仲間内で課題を共有しただけで終わってしまう。もう少しシリアスに、予算をいくらかけて何をしたらどういうことが起きるか、さらには専用施設を作るならば、予算要求するための根拠は何かという、積極的かつ具体的な検討をこの機会に始める必要がある。
・ 具体的に燃料側から水にどういう要求があるのか、水から燃料側にどういう具体的な内容があるかということが見えてこない。もっとお互い明確に認識しないと、境界領域の課題解決など出来ないのではないか。
・ 実際に実験室で再現ができない理由は、現場で起きていることが複合現象のためである。その必要不可欠なパラメータが全部揃った研究・実験をやらなければならない。パラメータの中で重要なのは照射で、電子線加速器は非常に有効だと思われる。
・ 電子線やその他の加速器の重要性が議論されるが、定量的に何がどう効いているのかを、きっちり押さえながら進めないと定性論に流れてしまう懸念がある。
・ 材料側にはたくさん優秀な人が行っているが、燃料-水の界面現象は非常に面白いにも係わらず人材を集めることに必ずしも成功していない。学問的な問題設定など両者が協力し、学会として総力をあげて取組むことが大事である。
・ 未知の広大な分野が研究対象となっているが、具体的に、例えばベクトルが一致しているAOAを取り上げ、解決するメリットを議論し、トリガーを引き、それから徐々に全体に広げていくとういうようなアプローチが必要と考える。
・ ラジオリシスワークショップでは、ステンレスの腐食や構造材料が主な対象であるが、ラジオリシスは、英国バーンズ氏が、ステンレスではなくジルカロイの腐食に及ぼすHO2、O2-の影響を評価するために始めたのが端緒である。燃料-水境界領域の課題を議論する上で、炉心のラジオリシスにもう一回光をあてて、再度検討することが重要と感じた。
・ JAEAとして水化学は重要という認識がある。JMTRでは水化学を比較的自由に操作できる材料用小型ループも考えている。具体的な提案があれば、出来るだけ対応したい。
最後に進行役の内田氏により、一緒にやろうというムードは出来たが、それだけでは進まない。これを機に核燃料部会と水化学部会が、それぞれの強みをさらに強くする意味で協力し連携して進めていく努力をすることを確認できたと締めくくられた。
以上