第1回定例研究会

2007.6.25 日本原子力発電(株)本店
「高経年対策と水化学」

1  我が国の高経年化対策と産学官の連携について 菅野 眞紀(原子力安全基盤機構 規格基準部高経年化評価室)
2  BWR原子炉水環境下における酸化チタンによるSCC緩和効果 高守 謙郎(東京電力技術開発研究所材料技術センター)
3  PWR一次系における冷却材中溶存水素濃度の最適化―調和のとれたSCC環境改善を目指して― 永田 暢秋(日本原子力発電 発電管理室設備・化学管理Gr)

第2回定例研究会

2007.10.26 三菱重工(株)横浜ビル
「試験・研究に係わる基盤技術開発」

1 FACメカニズム解明に係わる基礎研究 荘田 泰彦(三菱重工業株式会社 軽水炉プラント技術部)
2 FACに係わる各因子の影響評価研究 米田 公俊(電力中央研究所 軽水炉高経年化総括プロジェクト 配管減肉ユニット)
3 高温高圧過酸化水素ループに関する実験技術―照射下を模擬した腐食環境における材料腐食挙動のin-situ計測 佐藤 智徳(日本原子力研究開発機構 腐食損傷機構研究グループ)
4 加速器を用いた水化学研究施設の提案 勝村 庸介(東京大学 工学系研究科)

第3回定例研究会

2008.3.5 (株)東芝 東芝研修センター
「被ばく線源低減」

1 BWRプラントにおける被ばく線量低減への取り組み 宮澤 晃(東京電力)
2 PWRプラントにおける被ばく線量低減への取り組み 松浦 正利(関西電力)
3 被ばく低減に関する国の取り組み 大嶋 巌(原子力安全・保安院)
4 化学除染後の再汚染抑制技術の開発状況 長瀬 誠(日立GEニュークリア・エナジー)
5 高経年化BWRプラントの被ばく線源低減技術 四柳 端(東芝)
6 溶存水素濃度最適化等のPWR被ばく低減技術の動向について 梅原 隆司(三菱重工)

国際活動報告
1 アジア水化学シンポジウム(台湾/H19.9.26-28) 瀧口 英樹(日本原子力発電) 岡村 雅人(東芝)
講演概要:本シンポジウムは水化学技術者・研究者の情報交換と経験の共有並びに人的ネットワーク構築を通じてのアジア地域における原子力発電の安全性向上と定着を目的に隔年で開催されている。今回(第3回)は台湾電力の主催により台北市で2007年9月27~28日に開催された。参加者数は84名(日本24名,韓国5名,台湾55名)で,発表件数は30件であった。基調講演では,日本から,国内原子力発電所の状況を報告すると共に,PWRとBWRに共通の水化学制御の提案があった。さらに,高経年化・燃料高度化・出力向上における水化学の技術課題と役割の重要性,及びその効果の定量化が必要との指摘があった。台湾からは「水化学最適化」の取り組みが紹介された。その内容はEPRIの水化学管理指針に準じたものであった。一般発表では,PWR関連が17件,BWR関連が10件であった。PWR一次系関連では,亜鉛注入実機適用実績,クラッドの熱力学と燃料表面サブクールについて3件(いずれも日本)の発表があった。PWR二次系関連では,SG伝熱管二次側腐食損傷・SG水位振動について5件,FACについて4件,浄化技術について1件,タービンでのEarly Condensationについて1件の発表があった。BWR関連では,被ばく低減について3件,予防保全について5件,その他2件の発表があった。次回は,2009年に日本原子力学会水化学部会が主催し名古屋(ホスト中部電力殿)にて開催することとなった。

2 IAEA燃料/水相互作用RCM(FUWAC) 内田 俊介(JAEA)
講演概要:IAEAプロジェクト「高燃焼度及びプラント経年化時の燃料挙動の信頼性確保を目指した最適水化学制御」(Optimization of Water Chemistry Technologies and Management to ensure Reliable Fuel Performance at High Burn-up and in Ageing Plant)の第2回RCM(Research Coordinated Meeting)が,2007年12月11-14日にインドのチェンナイにおいて開催され,日本から内田部会長が出席した。IAEAにおいては,燃料被覆管と水化学相互作用をテーマとして1981年に最初の水化学関連プロジェクト(CCI: Investigation of Fuel Cladding Interaction with Water Coolant in Power Reactor)が開始されてから,原子炉水化学のマニュアル作成(WACOLIN)と水化学モニタリングと制御(WACOL 及び DAWAC)のプロジェクトに引き継がれ,再び燃料と冷却水の相互作用について高燃焼度化と高経年化に対応した議論をすることとなった。今回のRCM参加者は23名(IAEA,ブルガリア,カナダ,チェコ,フィンランド,フランス,ハンガリー,インド,韓国,日本,ルーマニア,スウェーデン,ロシア,ウクライナ,中国,米国)であった。主な検討課題は,AOAへの影響因子(高負荷燃料,長期運転サイクル,運転条件,Li濃度,LiとKの差異),被覆管の腐食(新合金,Li限界値),線量率低減である。これらの課題について参加各国からプラントの経験と基礎実験・理論が提供された。特に,AOAは各国で発現の状況とプラント運転への影響が異なるようであり,AOAを支配するパラメータの同定に注力する必要がある。次回は2009年6月にフィンランドで開催される予定。

第4回定例研究会

2008.6.13 電力中央研究所 狛江地区
「水化学管理の体系化」

1 標準委員会水化学管理分科会の設立と今後の動向 中村 年孝(関西電力)
2 BWRおよびPWR水化学管理の体系化 平野 秀朗(電力中央研究所)
3  水の放射線分解シミュレーションに係わる研究活動と今後の課題 高木 純一(東芝) 勝村教授
4 水素注入効果の評価における課題 和田 陽一(日立製作所)
5 維持規格の検査規定に関する現状と今後の課題 堂崎 浩二(日本原子力発電)

水化学部会活動報告
1 「水化学サマーセミナ」最終案内 荘田 泰彦(三菱重工業)
荘田氏より、本年7月15日~7月17日にかけて福井市フェニックス・プラザで開催される第5回「水化学サマーセミナ in 福井」の開催に関する案内があった。

2 国際会議「NPC’ 08 Berlin」の案内 布施 元正(日立GEニュークリア・エナジー)
布施氏より、本年9月15日~9月18日にかけてドイツ・ベルリン市で開催されるNPC’ 08 Berlin “International Conference on Water Chemistry on Nuclear Reactor Systems”(主催:VGB Power Tech)に関して説明があった。同国際会議には、18ヶ国が参加予定であり、講演発表60件、および100件以上のポスター発表が行われるとの報告があった。

3 水化学国際会議の日本開催について 日本原子力学会・水化学部会・運営委員会
首記運営委員会の企画幹事(日本原電 瀧口氏)より、水化学国際会議の日本開催について提案がなされ、以下の基本事項について了承された。
①(社)日本原子力学会水化学部会が主催して、2012年あるいは2014年に「水化学国際会議」を日本で開催すべく準備活動を開始する。
② 今後、関係機関の理解・協力・支援を募るため、(社)日本原子力学会企画委員会・理事会の承認を得る。
③ 高経年化対応、燃料高度化、軽水炉高度化に向けた水化学の取組みと次世代型軽水炉への反映を基調テーマとする。
④ 今年9月の水化学国際会議国際諮問委員会で主催国として立候補の意思表示をすること。

第5回定例研究会

2008.10.20 日本原子力研究開発機構 システム計算科学センター
「流れ加速型腐食(FAC)の管理、研究、モデル、規格」

1 水化学によるPWR2次系炭素鋼配管の減肉抑制への取り組み 杉野 亘(日本原子力発電)
2 PWR2次系配管FAC速度に及ぼす水化学の影響 福村 卓也(原子力安全システム研究所)
3 PWR2次冷却系における流動加速型腐食に対する評価手法の開発 岡田 英俊(エネルギー総合工学研究所)
4 日本機械学会での配管減肉に関する規格の動向 稲田 文夫(電力中央研究所)
5 Flow Effects on Corrosion of Steels in Reactor Primary Coolant - Experience and Understanding Derek H. Lister教授(カナダ ニューブランズウィック大学)

第6回定例研究会

2009.3.9 日本原子力発電(株)本店
「状態基準保全の支援」

1 保全プログラムの充実と新検査制度 津田 保(日本原子力発電)
2 状態監視技術導入の取り組み 長谷川 彰(日本原子力発電)
3 パネル討論:状態監視としてのプラント水化学管理と保全への活用 高守 謙郎(東京電力) 久宗 健志(日本原子力発電) 高木 純一(東芝) 荘田 泰彦(三菱重工業) 布施 元正(日立GEニュークリア・エナジー)
4 電子線照射施設を利用した研究技術開発について 隅谷 尚一(関西電子ビーム)

第7回定例研究会

2009.6.16 三菱マテリアル(株) 桶川製作所
「燃料部材-水相互作用研究の国際的動向」

1 IAEA/TWGFPTの活動状況について 上村 勝一郎(原子力安全基盤機構)
2 IAEAプロジェクト(FUWAC) 内田 俊介(日本原子力研究開発機構)
3 軽水炉燃料国際会議の最近のトピックス 伊東 正登(三菱マテリアル)
4 燃料-水相互作用小委員会活動について 磯部 毅(三菱マテリアル)
5 原子力発電所の水化学花伝書 乙葉 啓一(日本原子力発電)

第8回定例研究会

2009.11.25 大阪科学技術センター
「スケール付着抑制」

1 PWR2次系統水エタノールアミン処理運転実績 田邊 哲也(関西電力)
2 九州電力(株)川内原子力発電所におけるSG2次側洗浄(ASCA) 松田 忠史(九州電力)
3 中国電力(株)島根原子力発電所の線量低減対策について 梶谷 博康(中国電力)
4 PWR2次系機器スケール付着挙動と抑制対策の適用への取り組み 石原 伸夫(三菱重工業)
5  BWRプラント高流速部へのスケール(クロム酸化物)付着挙動 山崎 健治(東芝)
6 PWR1次冷却系模擬環境下におけるジルカロイ合金へのクラッド付着挙動に及ぼす水化学の影響 河村 浩孝(電力中央研究所材料科学研究所)

第9回定例研究会

2010.3.9 秋葉原UDX(日立製作所)
「環境への影響低減」

議事録

趣旨説明 2009年水化学ロードマップにおける「環境負荷低減」の概要 荘田 泰彦(三菱重工業)
水化学ロードマップ2009の中での、“環境負荷低減”の位置づけとそれに関連する技術マップとその導入シナリオ、およびそれを実現するロードマップが紹介された。

1 オフガス高感度モニタ 曽田 康敬(日立GEニュークリア・エナジー)
2 PWRプラントにおける添加薬剤の低減に関する検討 石原 伸夫(三菱重工業)
3 原子力水浄化装置の性能改善 出水 丈志(荏原製作所)
4 凝縮沈殿法を用いた高濃度塩化物イオン含有廃液からの放射能除去方法の開発 関 晃太郎(東電環境エンジニアリング)
5 上下水道システムにおける環境対応の動向と処理技術 陰山 晃治(日立製作所 エネルギー・環境システム研究所)

第9回研究会議事録

水化学部会定例研究会 第9回研究会議事録

1.開催テーマ 「環境への影響低減」
2.開催日時:2010年3月9日(火) 13:30~17:00
3.開催場所:秋葉原UDXビル20階 日立製作所 会議室

4.内容
勝村部会長の開会挨拶に続き、今回のテーマの趣旨説明のあと、5件の発表があった。

趣旨説明
講演タイトル:2009年水化学ロードマップにおける「環境負荷低減」の概要
三菱重工業 荘田泰彦氏

講演概要:水化学ロードマップ2009の中での、“環境負荷低減”の位置づけとそれに関連する技術マップとその導入シナリオ、およびそれを実現するロードマップが紹介された。

講演1
講演タイトル:オフガス高感度モニタ
日立GEニュークリア・エナジー 曽田康敬氏

講演概要:BWRの燃料破損を検出する線形放射線モニタとバイアルサンプラを用いたバッチ式の核種分析に代わり、連続的に核種分析が可能となる高感度オフガスモニタについて紹介した。
Ge半導体検出器、電気式冷却器、FAパソコンと無停電電源装置を組合せ、低エネルギーγ線に適した薄型半導体の採用とバックグラウンドを低減するための減衰管を採用することにより、核種分析を連続かつ高信頼度で実現することを可能とし、燃料破損の早期検出に貢献する。

講演2
講演タイトル:PWRプラントにおける添加薬剤の低減に関する検討
三菱重工業 石原伸夫氏

講演概要:PWR二次系の構成材料の防錆剤として用いられているヒドラジンはPRTR法にて第一種指定化学物質に指定され、毒性を有することから今後は規制の強化が更に進んで使用できなくなることも想定される状況にある。このような状況の中で、火力やPWRプラントでの使用状況と代替え手法の検討状況を紹介した。代替え剤の検討と合わせて使用量の削減についても検討が進められているが、火力では代替え薬品の不適合で配管が減肉した例もあり、十分な検討が必要である。

講演3
講演タイトル:原子力水浄化装置の性能改善
荏原製作所 出水丈志氏

講演概要:原子炉浄化装置に採用されているろ過脱塩装置の構造、機能と性能改善への取り組み状況を紹介した。性能向上には流れの制御と均一なプリコートが重要であり、3段整流板を採用することで一方向流れを形成するとともに、低濃度で一定なプリコートスラリーを供給することで均一で良好なプリコート層が形成できる。エアバンプとエアスクラビングにより良好な逆洗性を得ている。さらに粉末カチオン樹脂の粒径制御によりアニオン/カチオン比を大きくすることで貫流イオン交換容量を増やせる可能性があることが示された。

講演4
講演タイトル:凝縮沈殿法を用いた高濃度塩化物イオン含有廃液からの放射能除去方法の開発
東電環境エンジニアリング 関晃太郎氏

講演概要:中越沖地震の影響で塩分濃度の高い水が管理区域内の廃液タンクに貯留されたが、廃液の性状が通常の放射性液体廃棄物処理設備での処理に問題があるものであった。そこで、4000tという大量の高濃度塩化物イオン及び微量の放射性物質を含む廃液処理手法を検討し、最適なアルカリ凝集沈殿の条件を決め、ろ過処理と組合せる方法を採用した。これにより、僅かの放射性廃棄物発生量で全ての廃液処理を完了した。

講演5
講演タイトル:上下水道システムにおける環境対応の動向と処理技術
日立製作所 エネルギー・環境システム研究所 陰山晃治氏

講演概要:上下水道システムの概要と環境規制への対応状況並びに開発技術であるオゾンマイクロバブルについて紹介した。上下水道システムで扱う水には水道水と再生水、下水放流水の3種類があり、それぞれに水質基準が設定され、それを満足させるために適した処理方法が採用されている。オゾン処理は臭気の除去などに有効であり、その利用効率を向上させるためマイクロバブルを活用する技術を開発した。この技術を適用することにより再生水の色度の顕著な低下を確認するとともに運転コストの低減にもつながることが示された。

5.連絡事項
1)次回定例研究会案内(東京電力・實重氏):次回は「人材育成・情報整備」に関し、東電 技術開発研究所にて5/31ないし5/24 に開催する予定
2)夏季セミナ案内(東芝・山崎氏):本年7/7、8、9の日程で宮城県松島のホテル大観荘にて開催予定。基調テーマは、「水化学技術の基盤と将来展望」。
3)次回総会案内(原電・瀧口氏):茨城大学にて開催される春の原子力学会にて部会総会を3/26、L会場で開催予定。                                    以  上