2023年春の年会

  1. 日時
    2023年3月14日(火)13:00~14:30
  2. 場所
    東京大学駒場キャンパス
  3. セッションタイトル
    プラント再稼働に必要となる水化学の取り組み
    座長 (東北大)渡邉 豊 教授
  4. 講演タイトル
    (1) PWRプラント再稼働に向けた1,2次系水化学の取り組みについて
    (MHI)前田 哲宏 氏
    (2) PWRプラントの高経年化対策としての一次冷却材の溶存水素濃度最適化に関する取り組み
    (原電)杉野 亘 氏
    (3) プラント長期停止後のCF逆洗管理について
    (東北電力)六沢 隼人 氏
    (4) BWRプラントの腐食電位測定
    (日立)伊藤 剛 氏
  5. 概要
    2011年の震災以降、国内原子力プラントは長期間の停止を経験したが、PWRでは徐々に再稼働が進み、BWRでも再稼働の準備が進められている。本セッションでは、水化学の観点から、再稼働のために行ってきた取り組みや、再稼働後の材料健全性維持、水質浄化などの安定運転のために実施中の取り組みついて、PWR、BWR双方の電力会社とメーカーから講演を行い、今後の再稼働および安定的な運転継続に資するものとする。さらに講演の後に、講演者、会場の参加者を交えて総合的に討論を行い、プラントに必要な水化学上の取り組みについて意見交換を行う。

2024年春の年会

  1. 日時
    2024年3月27日(水)13:00~14:30
  2. 場所
    近畿大学東大阪キャンパス
  3. セッションタイトル
    水化学部会、核燃料部会合同セッショ「事故耐性燃料(ATF)開発と水化学の取り組み」
    座長 (電中研)河村 浩孝 氏
  4. 講演タイトル
    (1) PWR向けCrコーティング被覆管の開発状況
    (MHI)岡田 裕史 氏
    (2) FeCrAl-ODS燃料被覆管の開発状況
    (NFD)坂本 寛 氏
    (3) SiC被覆管・チャンネルボックスの開発状況
    (東芝ESS)大脇 理夫 氏
    (4) BWRにおける燃料と水化学の相互作用とATF導入前の検討課題
    (日立GE)長瀬 誠 氏
  5. 概要
    事故耐性燃料(ATF)の開発が世界的な潮流となっている。燃料被覆管材料と水化学の相互作用の観点からは、腐食挙動に及ぼす水質影響、燃料被覆管表面での放射性核種の付着/剥離挙動の炉水放射能濃度への影響など、様々な検討を行う必要がある。本企画セッションでは、3種類のATFについて、それぞれの特徴と最新の開発状況を紹介するとともに、水化学面での課題や要望を明らかにする。特に、水化学の視点からは事故耐性燃料導入前に検討しておくべきと考えられる課題を提示し、燃料材料と水化学の関係についての認識を共有する。また、総合討論を開催し、ATFの早期実現のために必要な取り組みなどについて意見交換を行う。

部会報第15号

      1. 巻頭言
        長期運転とGXに向けた若手世代への期待

        河村 浩孝 部会長
      2. 特別寄稿
        「核分裂生成物挙動」研究専門委員会の歩み
        東芝エネルギーシステムズ株式会社 高木 純一氏
      3. 部会運営に対する若手有志からの提言書
        若手検討チーム
      4. 2023年度部会賞受賞者の感想と研究内容の概要紹介
        講演賞
        ・日本原子力発電 阿部 剛之氏
        _対象講演:An Evaluation on Corrosion in the Primary System During Long-Term Outage at Tokai-II
        講演会:AWC2022
         講演賞の受賞感想 研究紹介
        ・日立製作所 大橋 利正氏
        _対象講演:炭素鋼配管の流れ加速型腐食に及ぼす酸素注入と白金付着の影響
        講演会:日本原子力学会2023年秋の大会
         講演賞の受賞感想 研究紹介
      5. 「2023年度 第8回水化学サマーセミナー at 日立」報告
        サマーセミナーWG主査 長瀬 誠氏
      6. NPC2023報告
        会議報告
        東北大学 阿部 博志氏
        参加雑感
        電力中央研究所 山崎 樂氏
        報告書
      7. 水化学部会定例研究会開催概要
      8. 新任委員紹介
        日本原子力研究開発機構 端 邦樹氏
        三菱重工業 前田 哲宏氏
      9. 編集後記

2023年度部会賞 受賞者

奨励賞

  • 該当者なし

講演賞

  • 阿部 剛之
    対象講演:
    An Evaluation on Corrosion in the Primary System During Long-Term Outage at Tokai-II
    AWC2022
  • 大橋 利正
    対象講演:炭素鋼配管の流れ加速型腐食に及ぼす酸素注入と白金付着の影響
    日本原子力学会2023年秋の大会

第47回定例研究会

2024 .3.15 三菱重工業横浜ビル

プログラム(敬称略)
1. 2023年度水化学部会賞受賞記念講演
1)講演賞「An Evaluation on Corrosion in the Primary System During Long-Term Outage at Tokai-II」
日本原子力発電         阿部 剛之

2. 定例研究会 基調テーマ「ラジオリシス影響下の材料腐食と防食」
1)α/β/γ線ラジオリシス影響下の腐食評価と腐食抑制:研究の狙いと概要
東北大学            渡邉 豊
2)アルファ線による局所領域の腐食環境評価
日本原子力研究開発機構     端 邦樹
3)照射模擬環境下における鋼材の腐食挙動評価
東北大学            阿部 博志

3. 水化学国際会議(NPC2023)報告
東北大学            阿部 博志
日立GEニュークリア・エナジー   長瀬 誠
三菱重工業           前田 哲宏

第23回全体会議

日時:2024年3月15日(金) 13:35~14:00

場所:三菱重工株式会社 横浜ビル

参加人数:26名

議事:
(1) 委員の退任について(報告事項)

(2)活動報告(承認事項)
① 運営小委員会
② 部会賞選考
③ 企画担当
④ 企画運営WG(旧 定例研究会WG)
⑤ サマーセミナーWG
⑥ 広報担当
⑦ 「1F廃炉に係る核分裂生成物挙動」研究専門委員会活動報告
⑧ 水化学部会会計報告(審議事項)

(3)各細則の改訂について
① 水化学部会運営小委員会細則の改訂
② 水化学部会部会賞細則の改訂

配布資料:こちら

審議結果:
・2023年度活動報告:異議なく承認された
・水化学部会運営小委員会細則の改訂案:異議なく承認された
・水化学部会部会賞細則の改訂案:異議なく承認された
・水化学部会会計報告(2023年度):異議なく承認された

6.3 被ばく線源低減

_水化学改善による被ばく線源低減は、作業環境改善により検査・点検作業が円滑に進められ、従事者の安全確保に大きく貢献できるだけでなく、原子力発電所の安全・安定運転にも貢献する。このため、水化学改善による被ばく線源低減は、プラントの安全性維持に必要な深層防護のレベル1 「水化学による信頼性の確保」に該当する。また異常な過渡変化時の水質変化が燃料健全性や配管への付着挙動に影響を与え、その結果線源強度上昇に至ることを防止若しくは最小限にとどめるためにも有効であり、深層防護のレベル2「異常・故障の拡大防止」に該当する。さらに、水化学により炉心内外の放射能インベントリを低減することは深層防護のレベル3「事故の影響緩和」に該当する。なお、事故後の従事者の被ばく低減は物理的な対策(遮蔽、換気、防護装備)が主体であり、水化学のアプローチは深層防護のレベル4 「設計基準を超す事故への施設内対策」には該当しない。
_我が国の原子力発電プラント1基当たりの年間平均線量(以下、「平均線量」という)は90年代後半以降、諸外国と比較して高く推移しており、この原因は1サイクルあたりの運転期間の違いによる年間作業量の違いによるとの指摘があった。しかしながら、米国やスウェーデンでは近年も着実に減少傾向にあることから、単純に年間作業量の違いのみとは言い切れず、我が国の被ばくの現状を詳細に分析し、さらに被ばく低減を進める必要がある。
_また我が国の原子力発電プラントでは震災後に長期停止を余儀なくされているが、長期停止による線源核種の減衰と作業量の減少に伴い、平均線量は震災以前より大幅に低減しているが、再稼働後の平均線量がどのように推移するか注目されるところである。6.3-1再稼働後も現状の平均線量を維持するためには、既存技術の着実な適用のみならず、新規の水化学技術の開発・適用が望まれる。

_以上の背景をふまえ、原子力発電所の再稼働後の線源強度上昇を抑制するため、今後も継続して被ばく線源低減のための水化学技術の研究・開発を進めることとし、その目標を以下のとおり設定した。
<当面の目標>

    • 2023年度末を目途に既存線源低減技術の高度化を図り、再稼働後の線量率を2009年度線量率の30%減に抑制する。(世界トップレベルの平均線量維持)

<中長期目標>

    • 2024年度以降被ばく線源生成メカニズムの解明等により、革新的な線源低減技術の開発を進める。(世界トップレベルの平均線量を維持)

_以下に現状分析、研究方針と課題、及び産官学の役割分担について示す。

(A) 現状分析
①  我が国の原子力発電所で従事する放射線業務従事者の「個人被ばく線量」は、適切に管理されており、線量限度を十分満足している。またこれまでPWRでは高pH管理、BWRでは酸素注入、給水鉄制御等の水化学対策のほか各種被ばく線源低減対策が実施されてきたことにより、1990年以前までは平均線量も欧米諸国に比較して良好な結果を得ていた。しかし、1990年以降は諸外国の被ばく線量低減が進む中、我が国の平均線量はほぼ横ばいで推移し、震災前の時点では欧米諸国と比べるとやや高い水準にあった。
② 我が国の平均線量が横ばいである理由としては、欧米諸国と比較し線量率は同程度であるものの、運転期間の違い等の理由により年間あたりの作業量に違いがあることに起因する可能性がある。
③ 福島第一原子力発電所事故以降、原子力発電所の停止が長期間に及んでおり、長期停止による線源核種の減衰と作業量の減少に伴い、平均線量は震災以前より大幅に低減しているが、再稼働後の線量がどのように推移するか注目されるところである。
④ 世界的規模で環境問題が問われるなか、原子力の価値が注目されているとともに、世界各国では原子力安心を獲得するべく、近年IAEAを中心に被ばく線量低減活動が盛んに実施されている。我が国もより一層の被ばく線源強度低減対策を行い欧米諸国と同等の状況に改善する努力が必要である。
⑤ 2009年1月より新保全プログラム(新検査制度、柔軟な運転サイクル)が適用され、今後作業量の低減が期待される。なお、福島第一原子力発電所での事故後、運転時間の増加、炉出力向上、燃料高燃焼度化等の被ばく線源の増加に繋がる動きは停滞しているが、一方で福島第一原子力発電所の廃炉作業や新規制基準対応、プラント高経年化に伴う作業量の増加、ならびに熟練者技術者が(高齢化による)減少するなかでの現状同等の設備保全品質の維持等を考慮すると、被ばく線量低減に対する社会的ニーズは今後も依然として高い。このため、被ばく線量低減のためには、水化学管理の状態を監視し、そのデータを診断した結果に基づいて合理的な保全を行うことが必要である。また、再稼働後も欧米にて達成している世界トップレベルの平均線量を維持できるよう継続的な水化学技術の開発が必要である。
⑥ 現在、既存技術の高度化と被ばく線源生成メカニズムの解明という視点から、PDCAサイクルを廻し平均線量低減のための技術開発を進めており、当面、溶存水素最適化や亜鉛注入の高度化及び供用中除染の適用により、2009年度の線量率を30%低減(2023年度)することを目標とし、新保全プログラムの適用効果と合わせて世界トップレベルの平均線量の維持を目指す。また中長期的には線源生成メカニズム解明により、より効果的な新技術の開発を目指して取り組んでいる。なお、これらの技術の中には溶存水素最適化等被ばく線源強度低減のみならず系統材料の健全性確保にも有効な技術があり、これらは次世代炉の水化学技術としても非常に有望である。
⑦ 被ばく線源強度低減技術の開発には、関連する燃料、材料等から専門的な知識・知見を集約し、産官学が共通認識をもって合理的に進める必要があり、今後より一層、分野横断的な取り組みが必要となる。

(B) 研究方針と実施にあたっての問題点
_冷却材中のクラッド挙動については、従来から、日本も含め各国で検討がなされており、実機クラッド分析、水質調査結果を元に、水化学という視点から被ばく線源強度低減を目的に冷却材への低濃度亜鉛注入等、種々の線量低減対策が実施されている。
_これら水化学改善策の適用効果の評価には、現在、被ばく線源挙動メカニズムに基づくモデルを用いて評価しているが、新規の水化学対策を適用した場合の評価精度が低下する等の問題があり、メカニズム解明についてもさらに検討が必要な状況にある。
_このような状況を踏まえ、今後の研究開発には、技術開発とメカニズム解明を並行して進めることが重要で、具体的には既存技術の高度化や新技術の開発を図りつつ、その検討過程で得られた試験データや実機データ等の知見をメカニズムの解明にフィードバックし、PDCAサイクルを回しながらシステマチックに検討する必要がある。また、燃料高度化、軽水炉利用高度化を考慮すると、水化学だけでなく、燃料や系統材料への影響評価の検討が必要となることから、燃料、材料等関連分野と幅広く連携して、専門的な知識・知見を集約し、産官学が共通認識をもって合理的に技術開発を進めることが重要である。

① 既存線源低減技術高度化
_PWRにあってはリチウム(Li)濃度や水素濃度の最適化、亜鉛注入等、BWRにあっては給水水質制御・亜鉛注入等の水質制御に関する既存技術の高度化をはかるとともに、Liの代替剤として有望視されている天然カリウム(K)によるpH制御の高度化を図る。
_被ばく線源除去技術である除染技術を、より廃棄物の少なく定期検査工程に影響しない技術に改良していく。

a. 高Li運用(PWR)
_最適pH値に管理することは腐食抑制と燃料表面への腐食生成物移行抑制による被ばく低減に有効とされていて、弱酸であるホウ酸の濃度に対応してLi濃度を高め、運転サイクル全体を最適pHとすることが考えられる。しかし、高Li濃度管理の適用には、照射試験等による燃料被覆管腐食影響確認とともにラボ試験によるニッケル基合金のPWSCC亀裂進展に対する影響を確認する必要がある。一方、Kは、Liよりも材料への腐食性が小さいと言われていることから、Kの適用によってニッケル基合金のPWSCC感受性を高めることなく運転サイクルを通して最適なpHに維持できる可能性がある。
b. 濃縮10B運用(PWR)
_被ばく低減のために最適pH管理とするには高Li濃度管理適用以外に10Bの比率を高めた濃縮10Bの適用がある。既設プラントに適用するにはホウ酸置換、廃液処理、10B濃度分析管理や、発電所内で天然ホウ酸と混在することとなるため、ホウ酸粉の識別管理、等運用面での要領作成が必要であり、放射性廃棄物量及び定検期間延長については、定量化する必要があるが、研究要素は残っていない。なお、ドイツでは、30%程度の濃縮10Bが実機で使用されている。
c. 溶存水素濃度最適化(PWR)
_溶存水素はNiの化学形態を通して被ばく線源挙動に影響を与え、低溶存水素濃度の方が被ばく線源強度の低減に有効であると考えられている。ただし、出力運転時の溶存水素濃度下限値(15cc/kg・H2O)を下回る低濃度(低DH)の適用に関しては、水の放射線分解抑制効果の維持、燃料被覆管等材料健全性及びPWSCC抑制効果を確認する必要があり、それらの結果を踏まえて実機適用を目指す。この実機適用に向けて燃料照射試験(燃料被覆管材料健全性、被ばく低減、及び放射線分解評価)並びにSCC試験(PWSCC、IASCC評価)を実施する必要がある。また、本試験で得られたデータをPWSCC発生メカニズム解明の一助とする。
d. Co除去イオン交換樹脂適用(PWR)
_近年、米国のPWRプラントにおいて、フィルタで除去できない微細な粒子状(コロイド状)のCoを除去するイオン交換樹脂の適用例が報告されており、適用後に冷却材中放射性Co濃度の著しい低下が認められている。当該樹脂の国内プラントへの適用に際しては性能と設備への影響を確認する必要がある。国内でも採用された場合には、実機プラントのデータをフォローし、効果を把握する必要がある。
e. プラント停止時水質管理の高度化(PWR)
_PWRプラントでは、溶存水素及び放射性希ガスの除去、配管等からのクラッド溶解促進のための、停止操作・水質管理(脱ガス、酸化運転)が行われているものの、停止時のこれらクラッドの溶解挙動については充分に理解されていない。停止時におけるクラッドの溶解挙動を評価し、被ばく低減に有効な脱ガス、酸化運転手法を開発する必要がある。
f. 被ばく線源低減水質制御技術の高度化(BWR)
_貴金属注入、酸化チタン等の水化学技術の適用にあたり、炉内での放射能挙動を評価することにより、被ばく線量に与える水質変更の影響を確認し、必要に応じ対応策を立案する。
g. 除染法の高度化(BWR、PWR)
_点検/保守作業での作業被ばく線量を低減するために機器除染がPWR、BWRで実施されている。また系統全体の除染は国内では“ふげん”と一部のBWRにおいて適用されており、点検・検査や大型工事の作業被ばく低減に貢献してきている。今後さらに機器除染、系統除染とも実機で活用される範囲を拡大するには、機器健全性に問題が無いのはもちろんのこと、除染に要する工程を短縮し、発生廃棄物が少なく、しかも除染後の再汚染の問題が無い除染法の開発が必要である。
_また、廃炉プラントにおける被ばく線量低減及び廃棄物の処分費用を含む解体費の削減のためには、比較的線量率の高い廃棄物量の削減が有効であるが、このためには、より除染効果が大きく且つ二次廃棄物量が小さい除染方法の開発が必要である。
h. 亜鉛注入の高度化(BWR、PWR)
_亜鉛注入については、メカニズムに立脚した最適な注入運用を目指すべく、亜鉛注入プラントから取り出した機器表面の酸化被膜の観察等から亜鉛注入による線源低減機構を明らかとする必要がある。
_また、亜鉛注入の副次効果として、SCC抑制効果が得られる可能性について提唱されていることから、プラント高経年化対策としての亜鉛注入の有効性についても検証する必要がある。

② 革新的線源低減技術開発
a. 被ばく線源生成のメカニズム解明
_被ばく線源(線量率)低減による作業環境の大幅な改善のためには、ブレークスルー技術が必要である。既存の技術にとらわれず、改めて基盤研究を立ち上げ、機構論に基づいた技術の開発を目指すことも必要であり、メカニズム解明のための試験が必要である。
_定期検査時の被ばく線源評価のため放射性腐食生成物の挙動はこれまでの研究によりある程度は解明されてきているが、多くは現状の実機実績をベースとした範囲での評価である。出力増加による沸騰状態の変化や新材料採用等これまでの実績の延長線から外れる場合に対しても線源強度を推測できるように、メカニズムに基づいた挙動モデルを構築し線源評価を可能とすることが望ましい。
_被ばく線源の生成は、放射線照射や沸騰現象、材料の腐食機構等が複雑に関連した事象である。このため、メカニズム解明のための試験が必要で、材料や熱流動分野等と連携しつつ、基礎メカニズムを解明し、機構論的手法を構築し、それに基づいたモデルを構築する。
_具体的には「PWR一次冷却材溶存水素濃度最適化」や「被ばく線源生成メカニズムに基づいた対策技術開発・実証(PWR、BWR)」において取得されるデータを検討の出発点として被ばく線源生成メカニズム解明を進めるのが適当である。
_また、当面メカニズム解明の検討のために必要なデータは実機のデータや既存の試験炉等を有効利用して取得することとなるが、放射線照射や沸騰の複合的因子を解明し、メカニズムの検討を高度化するためには今後、照射試験施設等試験設備の整備が望まれる。
b. 燃料高度化、軽水炉利用高度化、高経年化対応水質変更の影響評価
_米国の事例では、燃料の高燃焼度化や増出力により被ばく線源が増加する懸念が指摘されている。また、水化学によるSCC対策である「貴金属注入」により被ばく線源が増加した事例も報告されている。
_海外事例の調査や機構論的手法により影響を定量的に理解し、トレードオフを回避した最適な水化学管理を目指す。
i) 燃料高度化の影響評価
(イ)PWR
_運転期間の長期化により腐食生成物量の増加と比放射能の上昇が予想されるため、海外調査等により先行している海外プラントをベースとして、AOAや放射性クラッドバースト発生等の放射能挙動への影響を評価する。
_なお、本評価については、後述する軽水炉利用高度化での沸騰による燃料付着クラッドに関する試験と併せて検討し、実機データ、メカニズム検討及びラボデータをPDCAサイクルの中で有機的に結合し検討を進めていく。
(ロ)BWR
_運転期間の長期化を実施することにより、原子炉水放射能濃度の上昇が懸念される。また、原子炉内への鉄持込量が増加することによる停止時クラッドスパイク量の上昇も懸念される。これらの影響を明確にしておき、運転サイクルの長期化に備える。
ii) 軽水炉利用高度化の影響評価(出力向上、運転期間の長期化)
(イ)PWR
_発電機増出力による一次系高温側温度上昇に加えて、燃料表面でのサブクール沸騰の程度が大きくなる。炉心ボイド率の上昇により、燃料表面への腐食生成物の沈着量の増加と生成放射能量が増加すると考えられ、これらは放射能クラッドバーストの発生を増加させる。さらに、現状採用されている線源低減対策の効果が低下することも考えられる。これらの点から、試験炉による沸騰を考慮した燃料付着クラッドに関する照射試験を行い、線源強度への影響を評価する。具体的には前述の溶存水素濃度最適化での燃料照射試験及びSCC試験にて評価を実施していくことが適切である。
(ロ)BWR
_発電機増出力による原子炉熱出力が増加するため、炉心中性子量(束)が増加(分布が変化)する。ゆえに、放射化腐食生成物の生成量の増加が予想され、さらに、被ばく線源強度の増加が懸念される。
_このため、線源強度の上昇を抑制する適切な対策選定の検討に資するため、炉内環境の変化による放射化腐食生成物の挙動について評価を行う。
iii)BWR水化学変更の影響評価
_貴金属注入、酸化チタン等の新しい水化学技術の適用にあたり、炉内での線源挙動を評価することにより、水質の変更が被ばく線源強度に与える影響を確認し、必要に応じ対応策を立案する。
c. 革新的線源低減技術の開発と適用
_上記a.、b.の検討を基に、燃料や系統材料へのクラッドの付着・剥離現象を解明し、出力増加による沸騰状態の変化や高経年化対応水化学の改良、燃料材料の高度化等にも対応した新しい水化学を提案し、被ばく線源強度低減のブレークスルーに資する。
_BWRにおいてはタービン系へ放射能が移行する。BWR運転中のタービン系の主要な被ばく線源である16Nの主蒸気への移行を低減しタービン系線量率やスカイシャイン線量率を抑える。16Nの移行は高経年化対応水化学により増加する場合があるだけでなく、出力増加も影響する可能性があり、その影響を評価する必要がある。
_また、我が国発の技術であるBWR及びPWR一次系への分散剤添加による線源除去技術について、線源低減効果の検証、燃料被覆管、系統材料への影響評価を経て実機への適合性を評価する必要がある。

(C) 産官学の役割の分担の考え方
① 産業界の役割

    • 被ばく線量の制御と実績評価:有効性検証と副次影響確認
    • プラント運用上の影響評価
    • 被ばく線源低減技術の開発
    • 管理指針等の整備

② 国・官界の役割

    • データ及び評価手法の検証
    • 海外規制動向等の把握
    • 長期的な施設基盤の整備(照射試験炉)

③ 学術界

    • 基盤研究(基礎データ、新知見の蓄積)
    • 腐食生成物メカニズム解明への支援(放射能蓄積挙動等の科学的裏付け)及び研究

④ 学協会の役割

    • 人的交流と育成
    • ロードマップの策定・改定
    • 水化学評価技術、管理技術等の規格・基準化、標準化

⑤ 産官学の連携

    • 技術検証及び施設整備
    • 人材育成

(D) 関連分野との連携
① 燃料高度化
_運転サイクルの長期化、炉出力向上に伴い腐食生成物の発生・付着の増加により被ばく線源の増加が懸念されることから、燃料部門のほか関連各所と広く連携して対応が必要。
② 被ばく線量低減
_被ばく線源強度低減技術の開発は、原子力発電所の被ばく線量低減により、国際貢献に資するとともに、被ばく線源強度低減技術を盛り込んだプラント設計・運用計画を行うことによるプラント輸出競争力の強化にも大きく寄与することから、産官学が一体となって取り組むことが必要。また、世界トップレベルの平均線量を目指し、それを維持するという目標の達成には、実施主体である産業界がこの目標に対して高いインセンティブが持てることが重要であり、今後、その対策について産、学で検討が必要。

図6.3-1に導入シナリオ、表6.3-1に技術マップ、図6.3-2にロードマップを示す。

参考文献

[6.3-1]A.Suzuki, “The Radiation Management Reported by Licensees and the Relevant Regulations Amendment in Japan”, 2018 ISOE international Symposium, October (2018).

課題調査票

課題名 被ばく線源低減

マイルストーン
及び
目指す姿との関連

短Ⅴ. 保全・運転の負荷軽減・品質向上
⇒自主的安全性向上の効果的・継続的な取り組みにより、保全・運転管理の高度化を図る必要がある。さらに、安全性向上を図りながら、我が国の原子力発電所従事者の被ばく量を低減する取組を行う必要がある。中Ⅱ. 既設プラントの高稼働運転と長期安定運転の実現
⇒電力安定供給性かつコストバランスに優れたエネルギー源としての利用に向け、高稼働運転や適切な高経年化対策を前提とした長期安定運転が必要となる。

概要(内容)

(1) 被ばく線源低減技術の高度化と適用
_被ばく線源低減のため、被ばく線源となる放射能の発生・移行・蓄積を抑制する水質管理技術を高度化するとともに効率的な腐食生成物の除去の検討や除染技術の高度化を行う。
(2) 軽水炉を取り巻く変化の影響評価
_貴金属注入等の水化学技術の適用、軽水炉利用高度化及び燃料高度化に伴い、被ばく線源の増加が懸念される。このため、プラント線量率上昇を抑制する適切な対策選定の検討に資するため、炉内環境の変化による放射能の挙動について評価を行う。
(3) メカニズム解明
_将来の新技術開発のため、材料表面における腐食・放射線影響・沸騰事象等の複合事象のミクロ的なメカニズムを解明し、被ばく線源の生成・蓄積メカニズムの知見を拡充する。
(4) 被ばく線源低減技術の開発
_被ばく線源の生成・蓄積メカニズムに基づいた新たな被ばく線源低減対策の開発を行う。

導入シナリオとの関連

_水化学による被ばく線源低減技術の高度化・開発による被ばく線源の低減

課題とする根拠
(問題点の所在)

水化学RMと深層防護との関連付けの検討結果を参照

現状分析

(1) 被ばく線源低減技術の高度化と適用
_水質変更に伴う被ばく線源低減効果並びに材料及び燃料への影響評価が必要である。また、腐食生成物除去技術の高度化に対しては放射性廃棄物処分対応との兼ね合いを考慮した検討が必要である。
(2) 軽水炉を取り巻く変化の影響評価
_炉内環境変化に伴って放射能挙動がどのように変化するかは海外プラントの実績評価等からある程度予測可能であるが、対応策の検討が十分でない。
(3) メカニズム解明
_被ばく線源である放射性腐食生成物の挙動メカニズムは実機サンプルの調査や腐食試験等、基礎試験データを基に把握する研究が継続されているが、環境変化等に十分対応できる状態にはなっていない。
(4) 被ばく線源低減技術の開発と適用
_国外を含め、全く新しい被ばく線源低減技術の開発は進んでおらず、メカニズム解明等の基礎知見の拡充とブレークスルー技術の立案が求められる。

期待される効果
(成果の反映先)

    • プラント従事者の被ばく量が低減し、従事者の安全性が向上する。
    • プラント関連業務への抵抗感が減少し、社会的受容性が向上するとともに作業人員の確保が容易になる。
    • 被ばく低減に係わる国際貢献に資する。
    • 被ばく低減技術を盛り込んだプラント設計・運用計画を行うことで、プラント輸出における競争力が高まる。

実施にあたっての問題点

課題全体の共通問題として下記がある。

    • 再稼働後の線源の再付着防止等が求められることから、課題解決には緊急性を要する。
    • 研究開発のための資金確保が必要である。

必要な人材基盤

(1)    人材育成が求められる分野

    • 水化学、状態監視技術、放射線防護技術

(2) 人材基盤に関する現状分析

    • 放射線作業従事を希望する者は減少していく方向にあると考えられ、技術を有した作業員も減じていくと思われる。
    • 被ばく低減のための水質管理技術はメーカや電気事業者が開発を継続してきており、現在は十分な人材の確保に努めているが、継続して開発を進めるために人員の維持が必要である。官・学には水化学の専門家が少ない。
    • 大学や研究機関では被ばく低減をテーマに扱う研究者・設備が少ない。

(3) 課題

    • 必要とされる人材規模は、原子力発電に関する国の方針に依存し、これに対応して、計画的かつ継続的な人材確保が必要である。
    • 東電福島第一事故後の原子力プラントの長期停止により、実際に経験を積む場が損なわれている。
    • 優秀な人材を惹きつけるという意味において、東電福島第一事故とそれに続く原子力プラントの長期停止は、若い世代の原子力離れを招いている。

他課題との相関

    • S111_d33-1:被ばく低減技術の高度化(水質管理技術、遠隔操作・ロボット技術、放射線防護技術)

実施時期・期間

長期(2050年)

実施機関/資金担当
<考え方>

産業界/産業界
_腐食生成物発生低減や除染方法の高度化等、実プラントへの適用によって効果が確認される被ばく線源低減対策の検討を行う。
<考え方>

    • 電気事業者は、事業主体としてプラント要件を取り纏めるとともに、プラントへの適用性評価を行う。
    • メーカは、プラント設計を熟知していることから、具体的な設計とプラントに合った技術開発を行うとともに、事業者が実施するプラントへの適用性評価を支援する。
    • 実施主体が資金担当となることが適当と考える。

産業界・学協会/産業界
_放射能挙動の評価に係わる研究を実施し、得られた知見は必要に応じて原子力学会標準等の規格基準に反映する。
<考え方>

    • 産業界(電気事業者、メーカ)が主体となって放射能挙動評価を行う。
    • 学協会は、被ばく線源低減に関する水化学技術に係わる規格基準等について検討を行う。
    • 放射能評価の実施主体が資金担当となることが適当と考える。
実施機関/資金担当

<考え方>

産業界・原子力規制委員会・学協会/産業界・原子力規制委員会
_ 被ばく線源低減に関する水化学技術の高度化及び開発を行う。これらが標準的手法となった場合には必要に応じて原子力学会標準等の規格基準に反映する。また、原子力規制に係わる水質基準の変更を伴う場合には規制研究の実施が必要である。
<考え方>

    • 産業界(電気事業者、メーカ)が主体となって被ばく線源低減技術の高度化及び開発を行う。
    • 学協会は、被ばく線源低減に関する水化学技術に係わる規格基準等について検討を行う。
    • 原子力規制委員会は、水質基準変更の可否を判断するための試験を実施する。
その他

 

第46回定例研究会

基調テーマ: 「福島第一原子力発電所におけるFP挙動について」
2023.10.26 オンライン開催

プログラム(敬称略)

1)FP研究専門委員会活動状況
日立製作所         和田 陽一

2)FPの基礎特性と1F事故後のふるまい
日本原子力研究開発機構   内田 俊介

3)SA解析におけるFP挙動
日本原子力研究開発機構    唐澤 英年

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