_第6章の各項目と本基盤技術との関連は比較的希薄であるが、深層防護レベル4までの評価を行う上では、核分裂生成物(FP)挙動との関わりが生ずるものと考える。第8章は「事故時対応及び福島第一原子力発電所廃炉対応」に係わるもので、これらはともに、FP挙動とは深く係わる。汚染水の処理処分、建物の汚染とその除染あるは環境汚染の修復についても、線源であるFP挙動とは密接に関わり、それぞれの項目で議論されものと考えるが、縦割りでは、技術的な見落としを生ずる可能性も懸念される。このため、FP挙動の共通事象とその理解、対応のための、基盤技術として、水化学ロードマップ2009に記載された「水化学・腐食に係わる共通基盤技術」に加えて、「核分裂生成物挙動に関する共通基盤技術」をまとめておくことが重要と考える。第6章及び第8章に記載された各技術項目と、本章の「核分裂生成物挙動に関する共通基盤技術」の関連は、第6章の各技術項目と「水化学、腐食に係わる共通基盤技術」との関係と同様である。
_本水化学ロードマップでは、水化学ロードマップ2009をベースに組み立てられており、水化学ロードマップ2009にはなかったFP挙動を全て既確立のロードマップの各項目に加えるのみでは、全体のバランスを損なうことも明らかになった。これは、多くの項目では、深層防護のレベル4対応で初めてFP挙動との係わりが顕在化するためである。また、第8章「事故時対応及び福島第一原子力発電所廃炉対応」では、取り扱う課題の過半がFP挙動に係わるものであり、共通基盤との切り分けが難しい。このため、一部は記載が重複するが、FP挙動全般を本共通基盤技術に取り入れた。
_ここでは、まず核分裂生成物(FP)の種類と主な特性について記載する。
_ウランあるいはプルトニウムの核分裂の結果、ウランあるいはプルトニウムは、2個余の中性子を放出し、2つのFPを生じる。実際には、トリチウムを含む3体に分裂するケース(3体核分裂:確率は、0.9~1.2×10-4/核分裂)もある[7.1.2-1]。この3体核分裂がトリチウムの主要発生源となる。FPは質量数の等しいものに分裂するよりも、図7.1.2-1に示すように質量数の異なる2つのグループの原子核に分かれる[7.1.2-2]。例えば、131I、137Cs等に代表される質量数130付近の比較的重い元素と99Mo、90Sr、95Zr等に代表される質量数90付近の比較的軽い元素の2つのグループが主なものである。
_FPは、ベータ壊変を繰り返し、崩壊熱を放出しながら、長寿命もしくは安定核種を生成する。表7.1.2-1に示すように、個々のFP核種は複雑な壊変スキーム内に含まれる[7.1.2-2]。
_崩壊熱は核分裂終了後、ほぼ指数関数的に減少する。崩壊熱の経時変化を、図7.1.2-2に示す。崩壊熱は、燃料の照射時間(運転時間)Ti、核分裂停止後の時間(原子炉停止後の時間)Tcの関数として、近似的に次式で与えられる(Way-Wignerの式)[7.1.2-3]。
Pd=0.1Po(Tc-0.2-(Tc+Ti)-0.2) (7.1.2-1)
ここに、 Pd:運転時の熱出力(W)
________Po:崩壊熱(W)
________Tc:停止後の時間(s)
________Ti:–運転時間(s)
_これらのFPの生成、壊変、減損について計算を行うコードシステムの代表的なものとしてORIGEN2(ORNL Isotope Generation and Depletion)コードがある[7.1.2-4]。生成、壊変の過程を連立一次常微分方程式体系で表し、行列指数法でその数値解を求める。1981年にリリースされ、1991年には高燃焼度のPWRとBWRを対象とするデータライブラリを追加したORIGEN2.1が、その後FP生成量の誤差を小さくしたORIGEN2.2が2002年にリリースされた(原子力百科事典ATOMIC、2015)。近年、MOX燃料の場合には核分裂収率が含まれていない同位体の核分裂率の寄与が増大するというバグがORIGEN2.2に発見され、JAEA須山らにより修正された結果、適切な計算結果が得られるようになった[7.1.2-5]。
_表7.1.2-2には、短期・中期・長期的な観点で重要となる主なFPを示す[7.1.2-2]。これらのFPは、燃料中においては以下に示すような物理化学状態で存在しており、事故時における燃料からの放出挙動や化学形に影響を与える。
-
- ウランまたはプルトニウム酸化物に固溶:全FPのほぼ半数、Sr、Y、Zr、La、Ce、Nd等
- 酸化物析出相を形成:ウランまたはプルトニウム酸化物への固溶限度あり、Ba、 Nb等
- 金属析出相を形成:Tc、 Ru、 Rh、 Pd、 Moの一部
- 揮発性FP:存在状態が完全には解明されておらず、状態に応じて、酸化物へ固溶、低温領域で凝縮相形成、被覆管とのギャップ部でCsI、Cs2MoO4、Cs2Te、セシウムウラネート等として析出等のように変化する。Br、Rb、Te、I、Cs等
- FPガス:低固溶率で酸化物相に固溶、粒内または粒界にバブルとして析出、Kr及びXe
_各FPは、事故時ソースターム評価の観点で、揮発性等の特性に応じたカテゴリーに分けられている。代表的なカテゴリー分けとしてNUREG1465 では以下のように区分されている[7.1.2-6]。
① 希ガス:Xe、Kr
② ハロゲン:I、Br
③ アルカリ金属:Cs、Rb
④テルル群:Te、Sb、Se
⑤ バリウム、ストロンチウム:Ba、Sr
⑥ 貴金属:Ru、Rh、Pd、Mo、Tc、Co
⑦ 希土類:La、Zr、Nd、Eu、Nb、Pm、Pr、Sm、Y、Cm、Am
⑧セリウム群:Ce、Pu、Np
_Phébus試験等最新の知見が反映され、SARNET等欧州のシビアアクシデント研究ネットワーク活動により、以下のように揮発性に応じたFPのカテゴリー分けがなされている。
-
- FPガス及び揮発性FP:FPガス(Kr、Xe)、揮発性FP(I、Cs、Br、Rb、Te、Sb、Ag)
- 中揮発性FP:Mo、Rh、Ba、Pd、Tc
- 低揮発性FP:Sr、Y、Nb、Ru、La、Ce、Eu
- 非揮発性FP:Zr、Nd、Pr
- アクチノイド:低揮発性と同等の放出率を示すU及びNpと、非揮発性と同等の放出率を示すPu等がある。
_一方で、万が一、事故が発生した場合のプラント内の放射線線量率や環境への影響という観点でFPを見ると、特に重要と考えられるのは次の核種になる。
①ヨウ素(131I):半減期(約8日)的には問題は小さいが、甲状腺ガン発症の要因とされるため。
②セシウム(134Cs、137Cs):半減期(約2年、30年)が長く、揮発性で燃料体から放出されやすく、プラント内外の線量率を決める主因となるため。
③ストロンチウム(90Sr):低揮発性でセシウムに比べて、燃料体から放出される割合は小さいが、半減期(約29年)が長く、β線放出核種として、体内被曝への影響は懸念されるため。
④トリチウム(3H):ウランの3体核分裂反応により生成される。半減期(約12年)が長く、β線放出核種である。特に、水素同位体であるため分離除去が困難である。
_ヨウ素は、化学的な挙動が非常に複雑で、特に放射線照射下では、図7.1.2-3に示すようなラジオリシス生成種との反応 7.1.2-7で、価数を変えやすく、その結果、溶液系からガス系への移行が見られ、環境へ放出される可能性が高い。これまで放射線照射下を含め、ヨウ素化学反応については研究例が多いが、事故時でのヨウ素の挙動を把握するためには、ヨウ素単独ではなく、セシウムその他のFP元素、あるいはラジオリシス生成種との反応を含む化学反応のデータベースの確保が必須となる。
_ヨウ素、セシウム、ストロンチウムが、核種フィルタや吸着剤で液中あるいは気中から除去、回収できるのに対して、トリチウムは水素の同位体としての濃縮法により除去、回収が必要で、工学的な規模での回収が難しい。表7.1.2-3にこれまで試みられてきた主要なトリチウム分離回収法を示す[7.1.2-8]。原理的には分離回収は可能であるが、工学的装置の運用という観点では、きわめて分離回収が難しい。これまでのトリチウムの処理法を見ると、海外の再処理工場でのトリチウムの処理は、重水中のトリチウムの回収の除いては、海水中への希釈放流が主である。
(A)現状分析
_研究開発の必要性は、1F廃炉対応と運転中の発電プラントの深層防護レベル4(シビアアクシデント)対応の2つに分けられる。
(1) 1F廃炉対応
_①事故時のFP挙動の解明
_②1F事故時のFP挙動の実態解明
__・汚染水処理
__・体内体外被ばく量評価
__・除染
__・廃棄物の分別保管
(2) 深層防護レベル4(シビアアクシデント)対応
_③事故時FP挙動解析コードの整備と標準化
__・熱流動過程との一体化
_④アクシデントマネジメントへの反映
__・事故進展モード対応のサイト内蓄積量、放出量評価
研究開発の現状は、以下の通りである。
①事故時のFP挙動の解明
_シビアアクシデント時のFP挙動の基礎。実際の燃料体からのFPの放出とその移行についての研究ではPhébus FPプロジェクト実験が知られているが、FPの代表核種であり甲状腺被ばくで知られるヨウ素については、さらに詳細に、照射による影響を含む膨大な研究が行われ、データベースも充実している。一方で、1F事故時に問題となったセシウムについてのデータは必ずしも多くないのが現状である。過去のデータベース及び知見と1F事故の解析評価で指摘された技術的なギャップを埋めるため、新たな研究開発が必要とされている。
②1F事故時のFP挙動の実態解明
_1F事故時のFP挙動をPhébus FPプロジェクト実験と対比させ、従来知見で理解可能なものと、新たなデータの必要なものの対比を続けている。現状では、まだ、1F事故時のFP挙動を十分に把握できていないため、今後継続的に、実機のデータ収集と分析を続け、既存データ及び知見で理解できるものと、新たなデータベースの必要なものに弁別し、実態解明を進めるとともに、新しい研究開発の提案、計画に資する。
③事故時FP挙動解析コードの整備と標準化
_既存のシビアアクシデント解析コードをPhébus FPプロジェクト実験データに基づくベンチマーク評価に用い、今後のシビアアクシデント解析の高度化に資する。また、上記、1F事故とPhébus FPプロジェクト実験データの技術的なギャップを、シビアアクシデント解析コードを活用して埋める。
④アクシデントマネジメントへの対応
_原子力発電所に関する新基準の設定、発行に伴い、発電プラントにおいては、アクシデントマネジメントの作成と履行が求められている。深層防護の思想に則り、従来のレベル3を超えたレベル4対応を、アクシデントマネジメントとして成文化し、通常の安全系機器、システムだけでは押さえきれない事象に対して、適切に対処すべき方法を明確化し、広くプラント内で共有することが必然となる。また、その基となる、レベル4事象発生時のFP挙動に対する基礎的な知識を広く共有することが求められる。知識の共有に置いては、本章7.2節「人と情報の整備」においても記述されているが、その中でもFP挙動に関する情報の共有について言及されている。
_これまで失われていたFP化学をはじめFPに係わる技術、情報を再収集し、技術としてきちんと後進に技術伝承(TT: technical transfer)する組織として、2017年6月に日本原子力学会に「シビアアクシデント時の核分裂生成物挙動」研究専門委員会が設置され、現状の分析、関連データの収集、技術課題の発掘が進められており、共通技術の整備と同時に人と情報の整備への寄与が期待されている。
_図7.1.2-4に、FP挙動関連の研究の必要性、現状分析及び研究方針を示す。
(B)研究方針と実施にあたっての問題点
_1F事故に遭遇して、FPを研究対象とする研究者、FPに携わる技術者が極めて少ないという現実が把握出来た。1990年代後半までは、チェルノブイリ原子力発電所事故を受けて、シビアアクシデントに関する研究が活発で、格納容器内に蓄積する水素を爆鳴気になる前に燃焼させるイグナイターの開発や、ヨウ素を中心とするFP挙動及びその除去関連の研究が積極的に進められた。しかし、2000年代に入ると、急激にSAへの関心が薄れ、関係する研究者、技術者が霧散していった。
_今後二度と同じ轍を踏まないためにも、40余年にわたる1Fの廃炉作業を遠隔、完全に遂行するためにも、FP関連の技術を再整理し、次世代へ的確に技術伝承していく必要がある。
_研究開発の方針として、以下に重点を置いた。
-
-
- 技術、研究の立ち上げは、まず関連技術者の組織化に立脚
- これまでの知見、データの再整理
- これまでの知識で、1F事故をどこまで評価できるかを明確化
- 従来知見の不足を早急に補う
- 新しい実験の提案。予算、人材確保(本ロードマップ)
-
_具体的な研究の進め方としては、以下の(a)、(b)の2本柱を念頭に進める必要がある。
(a) 廃炉作業円滑遂行(特に、プラント内外の被ばく抑制と廃棄物適正管理)
_①事故時のFP挙動の解明[一般的なFPに係わる基礎事象]
_②1F事故時のFP挙動の実態解明[事故時に見られた事象]
(b) 原子力発電プラントの安全運転(特に確実なレベル4対応)
_③事故時FP挙動解析コードの整備と標準化
_④アクシデントマネジメントへの対応
具体的には、
(i) FP分布の正確な把握、的確な取出と確実な処理
___可能な限り測定に基づき、測定不可の場合は予測
(ii) 事故時のFP挙動の予測とAMへの適切な反映
___シビアクシデント解析コードに依存
_ロードマップ推進のための研究開発推進体制としては、学会レベルでのFP研究の核を作るため、2017年6月、日本原子力学会「シビアアクシデント時の核分裂挙動」研究専門委員会を設立した。同準備会でまとめたPhébus FPプロジェクト実験のデータを中心に、議論し、1F事故との対比を議論して、必要な技術課題をまとめる。表7.1.2-4に主要課題を示す。
_3つのWGを組織して議論を進めているが、3つのWGの相関を図7.1.2-5に示す。
(C)産官学の役割分担の考え方
_核分裂生成物挙動に関する共通基盤技術の確立のための産官学の役割分担を図7.1.2-6に示す。
① 産業界の役割
a. 実機データの蓄積とニーズの提示
_基礎知見と実機知見の結合。特に学術界を積極的に取り込むためには、関連分野の研究ニーズの明確化とその成果の受け皿を確保することが必須である。現状では、学術界への研究ニーズの提示が研究資金の投入に優先するものと考える。学術界に関連研究拠点を確保することで、新たな研究が芽生え、その中から人材供給の可能性も育ってくる。拠点が拡大しつつある段階で、大きな研究資金を確保するという2ステップの対応が有効と考える。科学研究費補助金等の学(学術界)の分野での競争的研究資金を獲得するためには、特定機関を対象とした研究ニーズの開示では十分効果を発揮することはできない。科学研究費補助金の審査に当たる学識経験者群に研究ニーズを公式に開示することが必須となる。あるいは、不特定の学識経験者が読んで理解できる研究ニーズを明確に準備し、提案側がそのニーズドキュメント(提案書)を利用できるような配慮が必要である。こういったドキュメントの準備も、産業界の役割と考える。研究ニーズドキュメントでは、具体的な研究の必要性に留まらず、研究の難易度、期待されるブレークスルーの大きさ、さらには広く科学技術一般に対して期待される波及効果の記載が必須である。
_一方で、水化学・腐食に係わる共通基盤技術と異なり、FP挙動関連の技術は、ごく一部の通常運転時のFP挙動という例外を除くと、運転中の発電用原子炉では経験されない事象が中心であるため、プラントの運用実績から得られる知見、データは皆無に近い。にもかかわらず、レベル4対応では、FP挙動を想定したマニュアルの作成が必須である。どういうデータが必要か、何が不明確かといった情報を学術界に発信し、事故時の対応シナリオの作成が必要である。
_1F廃炉対応では、プラントの各所にアクセスし、データを収集することが産業界に求められている。こういったデータは、廃炉作業の円滑推進に必須であるとともに、世界的にも貴重なものであり、産官学での情報の共有化と国際的な情報発信が望まれる。また、アクセスの困難な箇所での遠隔計測、遠隔作業に係わる技術、中でも除染と計測技術は共通基盤技術として必須のものである。
b. プラント運用上の固有課題の評価
_複合現象のモデル化が必要である。
c. 既存技術の高度化と適用
_基本的には、産業界が独自に資金を確保して対応すべきと考える。ただし、国・官界のR&Dには積極的に参加することが必須で、この分野では、国・官界からの資金供与が必須となる。
d. 水質管理基準等の整備
② 国・官界の役割
a. 長期的戦略の指導的役割
b. 国際間の技術調整
__海外FP挙動関連の情報の把握と国内基準への反映_
__規制当局が、中心的役割を果たすのが望ましい。
c. 大規模実験の推進(に代わる研究用原子炉の建設)
_2016年に廃炉が決まったJMTRに代わる新しい研究用原子炉の建設、稼動とインパイルループ実験による“FP挙動の研究”には発電プラントの建設、運用、経年化プラントの維持、管理に当たる産業界とのかい離はあってはならないことで、装置の計画、製作の段階より、官界、学術界、産業界が一体感を持って、世界トップのインパイルループ実験の成功に向けてベクトルをそろえて対応することが必須と考える。
d. 国内自主技術の育成
_推進当局が、中心的役割を果たすのが望ましい。
e. 原子力の将来ビジョンの明確化と夢の創生
③ 学術界の役割
a. 基礎データ、新知見の発掘と蓄積
(共通的・普遍的・永続的研究テーマ)
_学術界の性格として、研究を強いて、対応できるものではないと考える。産業界の研究ニーズを理解し、能動的に新たな課題に向うような工夫と仕掛けが必要であり、研究資金の大小よりも、学術界に相応しい規模で、学術界としての活動を妨げることがないような資金提供が本質的と考える。そのためには、研究費の申請と受託が容易となるような、研究環境の構築が重要と考える。
b. FP挙動の科学的裏付け
c. 教育・人材の継続的供給
_学術界の自然な姿として、関連研究が根付くことによって、必然的に関連分野の人材育成が可能となり、その結果として、産業界で希望する分野での人材育成がなされるもと考える。結果を急ぎすぎることは、金の卵を生む鶏を損なうことにつながる。短期的には、産業界の自主努力で必要な人材を育成することが重要と考える。
④ 学協会の役割
a. ロードマップローリング
b. 規格標準類策定
c. 共通基盤技術の研究ニーズの発行
d. 人的交流と育成
⑤ 産官学の連携
a. 全体としてのベクトルそろえ
_国家全体として最大の力を発揮できるようなシナリオを提示し、共通の目標に向かって行くムード作りも重要である。特に、産業界の活力が低下気味であり、学の水化学への寄与が小さい点が問題で、連携を強めることで、問題の本質的解決を急ぐ必要がある。
_導入シナリオを図7.1.2-7に示す。
_技術マップを表7.1.2-5に、またロードマップを図7.1.2-8に示すとともに、具体的項目については、本項の末尾に、課題調査票としてまとめた。
参考文献
[7.1-1] 日本原子力学会水化学部会ロードマップフォローアップ小委員会, “水化学ロードマップ2009” (2009).
[7.1.1-1] 日本原子力学会水化学部会ロードマップフォローアップ小委員会, “水化学ロードマップ2009” (2009).
[7.1.1-2] 水化学部会, “水化学部会の現状と今後の展開―水化学高度化と標準化をめざして”, 日本原子力学会誌「アトモス」, 51, 310-313 (2009).
[7.1.1-3] 日本原子力学会編, ”原子炉水化学ハンドブック”, コロナ社 (2000).
[7.1.1-4] 腐食防食学会, ”高温水中における応力腐食亀裂進展試験方法” (2015).
[7.1.1-5] 腐食防食学会, “高温高純度水環境における単軸引張定荷重負荷(UCL)を用いた金属及び合金の応力腐食割れ試験方法” (2015).
[7.1.2-1] M. J. Fluss, N. D. Dudey and R. L. Malewickhi, “Tritium and Alpha-Particle Yields in Fast and Thermal Neutron Fission of 235U”, Phys. Rev. C, 6, 2252 (1972). http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevC.6.2252
[7.1.2-2] 日本原子力学会水化学部会「核分裂生成物挙動」研究専門委員会準備会, ”Phebus FPプロジェクトにおける核分裂生成物挙動のまとめ – 福島プラント廃炉計画及びシビアアクシデンと解析への適用”, 水化学部会報告, #2017-0001 (2017).
[7.1.2-3] K. Way and E. P. Wigner, “The Rate of Decay of Fission Products”, Phy. Rev., 73, 1318 (1948).
[7.1.2-4] A. G. CROFF, “ORIGEN-2: A Revised and Updated Version of Oak Ridge Isotope Generation and Development Code”, ORNL-5621, Oak Ridge National Laboratory (1980).
[7.1.2-5] 須山賢也, “ORIGEN2.2 コードの核分裂収率を取り扱うルーチンの問題”, 核データニュース, No.83, 63-39 (2006).
[7.1.2-6] L. E. Herranz and B. Clément, “In-containment source term: Key insights gained from a comparison between the PHÉBUS-FP programme and the US-NRC NUREG-1465 revised source term”, Progress in Nuclear Energy, Vol. 52 (5), July 2010, pp. 481-486 (2010).
[7.1.2-7] 成富満夫, “原子炉事故時における放射性ヨウ素の物理的、化学的挙動に”, 保険物理, 22, 189-207 (1987).
[7.1.2-8] S. Uchida, M. Naitoh, H. Suzuki, H. Okada, and S. Konishi, “Evaluation of Accumulated Fission Products in the Contaminated Water at the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant”, Nucl. Technol., 188(3), 252-265 (2014).
課題調査票
課題名 | 核分裂生成物挙動に関する共通基盤技術 |
マイルストーン |
短期 I. 燃料取りだし開始 =>核分裂生成物(FP)挙動に関する確実な理解短期 II. デブリ取出し方法確定 => FP挙動の確実な理解 短期 V. プラント再稼働 中期 III. デブリ取出し 長期 IV. 廃止措置 |
概要(内容) | (1) 研究基盤の確保/技術伝承 _産官学の研究機関が参加して、水化学共通基盤技術に係わる研究を長期的、計画的に実施できる仕組みを構築。学に研究ニーズを開示すると同時に、競争的研究資金獲得が容易になるよう、研究ニーズを開示。また、共同研究プロジェクトを構築していく環境を整備、実施を通し、技術向上を図ると同時に、学において技術伝承を促進して、長期的な研究基盤を確保。特に、核分裂生成物挙動については、若年層のみでなく中間層への技術伝承が重要。 (2) 技術・情報の整備/新技術への挑戦 _国内外の核分裂生成物挙動に係わる技術・情報を再整理し、ドキュメント化。1F事故の経験と重ね合わせて、技術・情報の整合性、妥当性を評価して、不足な情報を抽出し、計画的に補足するための方策を提示して、実行。 _国際的に核分裂生成物挙動解明のためのプロジェクトを企画し、研究開発を主導。このために、Phébus FPプロジェクトに代わる、新しい研究用原子炉の設置を準備し、新たな国際的な核分裂生成物挙動解明研究拠点を確保。 (3) 学協会規格等の整備 _事故時の発電プラント内外の核分裂生成物の計測において、モニタリングポスト、計測器、その使用法等のレベル差、校正、測定値から核分裂生成物濃度への換算法等、統一すべき課題が散見された。品質保証や社会への説明性に関する要求に対し、体系的・組織的に対応するため、放射線計測を中心に、学協会の場で民間規格化・基準化する。こうした民間規格及びその技術説明書は、これまでに蓄積された知識・経験を次世代に適切に継承し、世界的にも高い水準にある我が国の放射線計測のみでなく、水化学管理技術を維持するための技術継承資料として有用。 _過酷事故の発生及び拡大防止に技術情報に基づいて、関連する防災マニュアル類整備に核分裂生成物挙動の観点からの寄与を強化していく。 (4) 国際協力の推進 _上記(2)記載の国際協力体制を推進する。 _防災マニュアル類整備に核分裂生成物挙動の観点からの寄与を強化していく。 |
導入シナリオとの関連 | (1) 事故時のFP挙動解明を通して、廃炉作業の円滑遂行(特に体内・外被ばくに抑制)、原子力発電プラントの安全運転に資する。 (2) 上記を長期間にわたり維持するため、FP挙動関連の知見、技術を確実に技術伝承する。 |
課題とする根拠 |
|
現状分析 | (1) 事故時のFP挙動の解明:TMI-2事故処理収束後の研究活動低下
(2) 1F事故時のFP挙動の実態解明
(3) 事故時FP挙動解析コードの整備と標準化: 多分野との連携が不可欠
(4) アクシデントマネジメントへの反映: これからの課題 |
期待される効果 |
(a) 廃炉作業円滑遂行(プラント内外の被ばく抑制と廃棄物適正管理):上記(1)及び(2) (b) 原子力発電プラントの安全運転(確実なレベル4対応):上記(3)及び(4) (c) 上記を長期にわたって支える人材の確保 |
実施にあたっての問題点 |
|
必要な人材基盤 | (1) 人材育成が求められる分野
(2) 人材基盤に関する現状分析
(3) 課題
|
他課題との相関 | 「水化学ロードマップ」の他課題との対応
|
実施時期・期間 | 短期~長期。ロードマップ記載のステージ毎に実施。 |
実施機関/資金担当
<考え方> |
産官学の役割分担 _産の役割 _・ FP分布の測定と予測 _・ FP除去、固定化技術の確立 ___=>廃炉関連技術高度化:計測/処理 _・ AMの確立 ___=>最先端のAM:あらゆる可能性包含 _官の役割 _・ 必要な基盤(知識・人材・施設・制度)の整備 ___=>国家戦略としての人材育成計画 _・ 研究炉建設とin-pile実験 ___=>計画的な大型投資 _・ 産学の安全に係わる研究 _学の役割 _・ 事故時FP挙動の解明 ___=>評価手法の標準化 _・ 知の蓄積と展開 _・ 研究を支える人材の育成 ___=>基盤研究に係わる人材の育成 _学協会の役割 _・ 規格基準化と高度化に貢献 _・ 知識ベースの普及 ___=>FP取扱い方法の標準化産官学の連携 ・産官学による協調・共同研究 ・廃炉プロジェクトを支える要素技術の高度化 ・新しい照射試験設備の推進と高度利用 関連分野との連携 |
その他 | 特になし |