部会報創刊号 巻頭言 : 水化学部会発足にあたり

巻頭言

水化学部会発足にあたり

「水化学」部会部会長 内田俊介

(日本原子力研究開発機構)

2007年6月に発足した「水化学」部会の部会長に就任いたしました内田俊介です。浅学菲才を省みず部会長をお引き受けさせていただきましたが、これまでの「水化学」関連の研究専門委員会において蓄積・継承されてきた原子炉水化学の技術を更に発展させるため微力を尽くしてまいりたいと存じます。

1982年10月に、「水化学」研究専門委員会(主査:石榑顕吉先生)が設置されて以来、「水化学標準」研究専門委員会(主査:乙葉啓一先生)まで、6期24年にわたり、一貫して研究専門委員会としての活動が続けられました。この間、研究専門委員会では、一貫して、年に平均5回の研究委員会を開催し、水化学についての議論を多角的、計画的にすすめることによって、水化学に係わる諸現象のヴェールを剥ぎ、基盤・応用両面での技術の高度化や知識の体系化を推進して、その成果を委員会報告書や水化学ハンドブックにまとめると共に、国内のみでなく、国際的にも水化学の技術向上に貢献してまいりました。諸先輩の的確なご指導のもと、委員会活動は、機動性に優れた小さな組織の利点を生かし、新しい課題に的確、迅速に対応可能であったものと考えます。

しかし、水化学の分野でも他分野と同様に世代交代が著しく、技術転移を確実に行うためにも、技術の標準化が避けられず、一方で将来を見越して、研究方向を明確にし、限られたリソースでこれを具現化するためには研究ロードマップが不可欠となり、先の「水化学標準」研究専門委員会では、標準の原案作成とロードマップの作成に大きな足跡を残しました。こうした、標準化の推進、ロードマップの具現化を進めるためには、水化学の枠内だけでは限界があり、広く他の部会との連携を図っての活動が不可避となり、今回「水化学」部会として委員会活動をさらに発展させることになったものです。

部会となりますと、委員会の場合に比べると、組織的にも大きくなり、これまでのような小回りのきく運営が難しくなる面もありますが、従来の委員会活動のよさを残しながら、他部会との交流を積極化して、絶えず原子力発電プラント全体を視野に入れた学際での技術貢献に尽力できればと考えます。これまでの委員会活動の原動力となった研究委員会活動を、60人規模の専門委員会から200人規模の部会でどう展開させてゆくかが部会としての成否の分かれ目かと考えます。部会員諸兄の積極的な貢献に期待したいと存じます。

(内田俊介、2007年8月吉日)