部会報第9号 巻頭分

巻頭言

水化学部会 副部会長 久宗 健志(日本原子力発電株式会社)

2017年度より日本原子力学会 水化学部会 副部会長を務めさせて頂いております。

これまで,石槫先生,内田先生,勝村先生および多くの諸先輩方のご指導の下,企画担当として水化学国際会議2014やサマーセミナー等を計画させて頂き,水化学部会員のご協力により開催することが出来ましたことを心より感謝申し上げます。

 

国内の原子力発電所に関しては,2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震および東京電力 福島第一原子力発電所の事故に係る安全性向上対策のためプラントが長期停止しており,運転に伴うデータ蓄積が出来なくなっております。

また,プラント長期停止期間中にベテラン技術者の退職や技術開発予算の合理化による研究開発の停滞により,プラント水化学管理に係る技術力の維持向上が課題となるとともに,若手技術者への技術伝承が喫緊の課題となっております。

一方,海外においては,運転に伴うデータの蓄積,新規プラント建設に伴う研究開発の進捗により,技術力の向上と若手技術者の育成が進んでおり,国内の状況からは羨ましい限りです。

 

国内に原子力発電所が導入された黎明期には,プラント運転に伴う技術的課題に対して産官学が協力して取組み解決してきましたが,技術が成熟した現代においては過去と同じ対応は困難となっております。

このため,水化学部会では,2016年度に将来構想検討ワーキング・グループを開催して,技術力の維持向上に係る課題抽出や解決策を検討しました。

この検討結果から,技術力向上(技術開発)については,水化学ロードマップ改訂ワーキング・グループを設置して,水化学に係る研究開発課題の見直しや優先順位を検討し,技術伝承については夏期セミナーを1回/2年の頻度で開催しております。また,2018年度からは,水化学ハンドブックの改訂に取り組むことを計画しております。

更に,国内外の最新知見を収集するため,定例研究会を3回/年の頻度で開催するとともに,水化学国際会議やアジア水化学シンポジウムの国内開催について取り組んでおります。

 

今後,再稼働プラントの増加に伴い,運転データの蓄積や新たな課題の発生が予想され,原子力発電所の水化学に係る技術力の一層の高度化が要求されます。

水化学部会としては,これまでの活動に更なる創意工夫を加えて,技術力の維持向上や技術伝承に取り組んでいくことを計画しております。

今後とも,引続き水化学部会委員の皆さまのご支援,ご協力をよろしくお願い致します。